第121.5話 戦いが終わった後の様子
御伽の国を守護するリヴァイアサン。
そして、サポートするディーテとリリアは、火山の方角に天と地を結ぶ光の柱を見ていた。
「太陽柱みたいだな……綺麗だ」
「終わった……みたいですね//」
丁度、黒ムックから報告である。
「無事に封印出来ましたー//
ご主人様は、今回も死にかけましたー//」
死にかけと言う事は、生きているという事だ。
魔界の支配者が、他所の世界の揉め事で死にかけるなんて、何を考えているのやらと呆れるものの、無事に戻って来る事を妻達は喜んだ。
黒ムックの報せを聞いていたカーラとローラが駆け寄って来る。
「終わったの!?この世界は滅びないで済むの!?」
「もう時期、みんな帰ってくるぞ。お礼言わなきゃだな」
「……うん」
続々と帰還する戦士達。
子供達も従者達も疲れ果てているが、皆、笑顔だ。
互いの無事を喜び、抱き合うクロエとムック。
ラクレスを抱きしめるエキドナを、引き剥がそうとするカラとジーノ。
エキドナを羨ましそうに見つめるも、ただディオニスの傍に居るだけのクールビューティーなデアシア。
皆、心の底から喜んだのだ。
オリオンも皆の無事を喜んでいた。
そこに、カーラとローラがやって来たのだ。
俯いたまま、カーラは言った。
「あんたは、普通の神様と一緒よ」
「?……ケチで染みったれな神様か?」
「そうよ。あんたは、夜が明けたら普通の幸せを知るって言ったけど、私達は普通の幸せを、まだ知らないわ」
「……まだ分からないだけだ。お前達の普通で幸せな日々はもう始まってる」
「相変わらず上からね。そんな目線で言われると、無理強いされてる様な錯覚を起こすわ」
「ふぅ……では、下から目線ならいいか?」
そう言うと、右膝を着きカーラとローラの前に跪いた。
「2人の女王よ。約束は果たされたのだ。
どうか、最後に異世界の住人を笑顔で見送って欲しい」
「女王?そんな地位は要らないわ」
カーラは、そっと、オリオンの頬に手を添え、口づけをした。
驚くオリオンの事など気に留めずに。
「私達に、王妃という地位を与えなさい。
私は、貴方に初めての口づけを捧げたのよ?」
オリオンは沈黙してしまったが、この女は黙っていない。
セレネである。
「おい!小娘!
いい根性だ!王妃になりたかったら、まずは、今のわいせつ行為を許してもらう為に、おでこを地面に擦り付けて”セレネ様、勝手な真似してすいません。何でも言う事聞きます許して下さい”と言うのが先だ!馬鹿者め!」
闘気を漲らせ、怒鳴るセレネ。
しかし、負けん気の強いカーラは食い付く。
「あんたとオリオンは、まだ結婚してないじゃない!
まだ、オリオンは誰のものでもないわ」
「くっ!!……しかし、私は両親公認のフィアンセだぞ!夫婦未満!しかし、恋人以上だ!!」
「なっ!?……魔王様は一夫多妻制じゃない!!私達の事も認めてくれるわ!!
ねぇ!?お義父様!!」
「知り合って間も無い、馬の骨如きが認められるものか!!」
「「ねぇ!お義父様!!」」
疲れ果てている所に、いきなりの無茶振りを食らった魔王は逃げるのに必死だったのだろう。よからぬ事を口走ってしまった。
「決めるのはオリオンだ。
その事について、どうこう言うつもりは無い。
しかし、オリオンよ。一夫多妻制とは強烈に苦しい時もある。
それだけは覚悟しておけ」
「……ふーん」
「私達との生活は、強烈に苦しかったんですか?」
「グルナ、今の発言ばっちり聞いたぞ」
「え?いや、ほんの少しだけだけど大変な時もあるって事を言いたかっただけだよ。ハハハッ……
すいません!ホントすいません!!」
窮地に追い込まれる魔王を後目に、オリオンは言うのだ。
「確かに、セレネは妻ではない」
「ちょっと!オリオン!」
涙目になるセレネ。
それを無視して、オリオンは続ける。
「だが、俺はセレネを妻にする。お前達2人は、俺が御伽の国に滞在している間に示せ」
「……?」
「!? オリオーン!!//」
「口づけの責任を取っても良いと思わせてみろ」
「うん、分かった。ちゃんと見ててね」
初めて、2人の王女が笑った瞬間だった。
俯いてはいるものの、頬を赤く染める2人を見て、オリオンもまた微笑んだ。
その後、駐留部隊を派遣し、オリオン以外は魔界へ戻った。
魔界へ戻った翌日。
サタナス国では、王の間の入口に、両手にバケツを持たされ立たされている魔王の目撃情報が流れた。