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第119話 巨人スルト現る

この雑魚は、スルトが生み出しているのだろうか。

火山に到着してから、20時間以上が経過したが、雑魚の湧き出るペースは衰える気配がない。


魔王軍の兵士は、攻撃手段が魔法のみという事もあり、若干苦戦している様だがフェニックスの航空支援を受けて何とか持ち堪えている状態だ。

フェニックスの支援も強力だが、セレネのおかげで出番の無いオリオンが遊撃しているのも有難い。


封印結界の方は5層目まで展開し、最後の仕上げに入っている。

このまま順調にいけば、後2時間程で完成するだろう。

もう少しなのだ。


「みんな!もう少しだ!踏ん張れ!!

アンラ・マンユ!すまないが、謎の生命体を大量に派遣してくれ!」

”ん?毛サラン共を呼び寄せて何をさせるつもりだ?分かってると思うが、アイツらのステータスは素早さ全振りで防御は紙ぞ?

そもそも、意思の疎通は大丈夫なのか?”

「……毛サラン?いや、負傷者の搬送をお願いしようかと。

意思の疎通は……2、3日前まで一緒に生活してたから大丈夫だ」


こんな所で、謎の生命体の種族名が発覚してしまった訳だが、最早どうでもいい。

御伽の世界にやって来た謎の生命体達は、密集し絨毯の様になると、負傷者を乗せてどこかへ行ってしまった。


……………………………………………


火山での戦闘は順調の様だ。

御伽の国へ押し寄せていた”終末の兵士”は明らかに、その数を減らしていた。

(けど、この不安は何……)


リヴァイアサンをケツを叩きまくり、自分は優雅に見学を決め込んでいたアリスだったが


火山に行かないといけない。


ふと、そんな気がした。


「リヴァイアサン、私は火山に向かうぞ!」

「お任せ下さい!必ず死守します!!」

「当たり前だ!力尽きても戻って来るな!」

(アリス様、大丈夫です。力尽きたら帰れませんから)


弄り甲斐も、頼り甲斐もある幻獣界の王だ。

雑魚がどれだけ群れようと、敵う相手ではない。


火山を目指し飛び立ったアリスを、突如、乱気流が襲った。


(私の障壁に影響を与えるなんて……ただの突風じゃないわね)


どうやら、アリスの嫌な予感は的中してしまったようだ。

火山の中腹から立ち上る噴煙。

そして、断続的に続く地鳴り。

次第に地鳴りは大きくなり、遂に火山の中腹で巨大な爆発が起こった。


「なっ!!?」


爆発の後、巨大な穴の空いた山肌から現れたのは、炎を纏う巨大な剣。


そして、巨大な腕であった。


「あれが、巨人スルトなのか!?」


一体何百mあるのだろうか……

その馬鹿げたサイズの剣を振り回す、馬鹿げたサイズの腕。

その切っ先が加速を始め、大地を斬り裂きながら土煙を上げた。

遠目に見ても速い斬撃だ。

至近距離で、しかも、あのサイズなら躱すのは困難だろう。


火山を目指し、再び飛行を開始しようとしたアリスの目は、向かってくる物体を捉えた。

(?……何かが飛んで来る)


アリスの横を掠める、赤く熱せられた鉄の塊。

それは、無惨にも大破した大型魔導機関砲の砲身であった。

低純度とはいえ、神の金属で創られた砲身は原型を留めない程に変形し、溶解寸前まで加熱されていた。


自国の兵士が危険な事など、想像に容易い。

(私の神竜の吐息(ブレス)なら止められるかも知れないけど、みんなを巻き込んで完成間近の結界も吹き飛ばしてしまう!どうしたらいいの!?)


混乱するアリスを他所に、無常にも動き始める切っ先。

生半可な威力(ブレス)では、止めることは出来ないのだ。星を破壊する程の威力を秘めてはいるが、今は何とも無力である。

数瞬の後に起こるであろう、麓での惨劇を想像し、思わず目を閉じてしまったアリス。その耳に雷鳴が響いた。


魔王の”雷牙”である。


麓を襲う魔剣を跳ね上げる、一閃の雷撃。

雷は、上空から地表へ落ちるだけではない。

上空へも、水平にも放電するのだ。

それを、自然界には無い威力で自在に操り、魔剣を弾いていた。


「旦那様!すぐ行くー!!」


私は、かゆいところに手が届く妻なのだ!

アリスは、火山の麓を目指した。


………………………………………


「おいゼウス!コイツがスルトか!?」

「あ!?見たら分かるだろ!コイツはマジでヤバいぞ!マジヤバ!!」

「あ!?古いんだよっ!!集中しろ!!もう1発来るぞ!!」


振り下ろされる魔剣を相殺する様に放たれる雷牙。

周囲の空気は、瞬間的に数万度に加熱され水蒸気爆発を起こす。


魔剣の切っ先に……


スルトの手首に……


徹底的に放たれる雷牙によって、攻撃は遮る事が出来てはいる。しかし、ダメージを与える事は出来ないのだ。

上空から降り注ぐ剛剣を弾き、麓で湧き出す雑魚の群れさえも相手取る魔王。


「グルナ!第2の人生で1番良い動きだ!頑張れ!!もっと追い込め!限界を超えろ!!」

「うっせーな!早く封印しろ!持たねぇぞ!!」


最早、ゼウスからの声援は耳障りでしかない。

その声援が原因だったのか、単なる凡ミスだったかは分からないが、魔王は狙いを外してしまった。

振り下ろされる手首の真下で水蒸気爆発を発生させるつもりが、手首の上で発生させてしまったのだ。


「しまったっっ!!」


水蒸気爆発の追い風を受けて加速した魔剣は、アポロンを守る守護神セレネの頭上に落下したのだ。

地上世界の守護神セレネの頭上に、スルトの魔剣が迫る。


オリオンは遊撃を始め、傍には居ない。

アポロンを守るのはセレネのみ。

絶対防御を誇る”破邪の盾”とスルトの魔剣がぶつかり合う。

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