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第116話 異世界の住人

魔界に降臨した神々と、今回の件について話合いを行う。

会議室には俺と子供達。

そして、その従者達が居るのだが、妻達の姿は無い。


何時になく真剣な表情のゼウスが、まず口を開いた。


「現状、スルトを倒せる見込みは無い」

「それはどう言う事なんだ?」

「配下の雑魚は、耐性は有るものの魔力をエネルギー源とした攻撃で何とか始末出来る。

だが、スルトには神の能力しかダメージが通らねぇ。

しかも、通ると言っても効きが薄い。

奴は、何百もの神々の集合体だと思え」


ピンと来ないが、ゼウスの口調から、とにかくヤバいって事だけは伝わって来た。


「レーヴァテインってのが有ったらどうなんだ?」

「レーヴァテインが見付かったら何とかなるのかも知れねぇが、仮に見つかったとしても特効薬的な効果があるかが分からねぇ」

「期待しない方がいいな。完璧に封印するに、どのぐらい時間が掛かるんだ?」

「丸1日は掛かるだろう」


ゼウスの重々しい言葉が響いた。

丸1日……神様達が、何者にも邪魔されず集中出来れば、丸1日なのだろう。

終末の兵士が現れ、駐屯地を襲撃したという事は、大なり小なり結界に綻びが生じているのだ。

俺達に出来る事は、神様達が結界の再構築を行っている間、全力でサポートする事のみだ。


こうしている間にも、綻びは拡がっているかも知れない。

終末の兵士は、人工物に引き寄せられるように向かって行き、徹底的に破壊するそうなので御伽の国は格好の的だ。


最早、猶予は無い。



………………………………………………



その頃。


忍び込ませておいた黒ムック伝いに、話の内容を聞いた妻達は、大きな溜め息をついた。

何故、関わらなくても良い事に首を突っ込むのか……


だが、ディーテは言った。


「まぁ、そういう所が好きなんだけどな……」


アリスとリリアも同じ気持ちだった。


「そうね。だって旦那様(だんな様)は……」


その瞳に映る、全ての者を


暴力や不幸や理不尽や……


あらゆる不条理から護ろうとする


”魔王という名の神”だから


妻達は、夜会を中断し、緊急会議を始めた。


……………………………………………………


今回の作戦は、2手に別れて実施される。


結界の綻びを修復し、更に強固に補強する者。

それと、火山から最も近い国である御伽の国を守る者である。


結界の補強は神様に任せるとして……

そこに邪魔が入らない様に徹底的に殲滅する者達が必要になるが、戦闘特化は大勢居るので問題無い。

問題なのは、御伽の国を守る者達だ。

セレネに守りを固めてもらうのが手っ取り早いが、オリオンは護衛部隊に入れたいし……となると、セレネは従者だからと、オリオンと一緒に戦う!の一点張りになるだろうし。


困った。

早くも、圧力が掛かっている。

セレネは、瞬きもせず俺を見てくるのだ。


困っていると、部屋に妻達が入って来た。


「旦那様、御伽の国は私達が守り抜くわ。しっかり時間を稼いであげて!」

「すまない、頼む」


妻達は、支援も防御結界も得意なので頼もしい限りだ。


………………………………………………


御伽の国では。


魔王軍が撤退し、通常を取り戻した様にも見えるも、何処か閑散とした寂しさを感じるカーラとローラ。


私達の人生は何だったのだろう……


今まで、愛された事など1度でも有っただろうか。

思い返すも、そんな思い出は見付からない。


「巨人スルト……」


昔、書庫で読んだ本に書いてあった。

巨人が復活すれば、この世界は終わる。

神々と巨人の戦いは、人々の心に影を落とした。

人々は、奪い合い、殺し合い……

人間の姿をした獣達が闊歩する世界と変わり、誰一人として他人を思いやる者は居なくなったそうだ。


短い人生だったけど、最後の最後まで不幸続きな人生だったわ。


コンコンッ


(ノックする音……誰かしら)


家臣や兵士達は、魔王軍の話を聞き、大勢が逃げて行った。

この世界の何処に居ても、結局同じなのに。


「誰?」


扉を開けると、そこにはオリオンとセレネの姿があった。


「オリオン……どうしたの?この世界は、もうすぐ終わるわよ?」

「俺達、異世界の住人は、神々と共にスルトを封印する事にした」

「あんなに強い軍隊は撤収したじゃないっ!!異世界の住人って何よ!!?

個人的にって事!?馬鹿なの!!?」


その目に、涙を溜めながら怒鳴るカーラ。


「俺を誰だと思っている」

「え?」


見下す様に、上から物申すオリオン。


「俺の父は、ルールも、摂理も、運命さえも捩じ伏せ破壊する”魔王”だ。

そして、俺はその魔王の”息子”だ」

「……だからって無理なものは無理よ」


諦めが、カーラの心を支配する。


「お前の望みは何だ?お前の心は何を欲している?」

「……普通の”幸せ”が知りたい」


そう呟くカーラに、オリオンは微笑み、言い放った。


「ならば、その想いを俺達に託せ」

「何度も神様にはお願いしたわ!!……でも叶わなかった」


何度となく味わったのだろう。

褒めている訳ではないが、怒った表情と諦めの表情が板に付いている。

コイツは笑うのだろうか。


「明日の夜が明けたなら、お前の望みが叶う」

「適当な事言わないで!何の根拠があるの!?」

「お前は願ってばかりだ。そうだろう?」

「……!?」

「今、心に決めろ。普通の幸せを知ると。

決して願うな。

俺達は、お前の知っているケチで染みったれな神様とは違う。

明日の夜が明けたなら、お前は普通の幸せを知るのだ」



ただ、そう言い残し、中庭に移動するオリオン。

そこには、錚々たる面々が集まっていた。


神界からは、ゼウスにハデス、ポセイドンにアポロン……トールも居る。

そして幻獣界からは、リヴァイアサンとフェニックス。

地上世界の妻、ディーテ

魔界からは、王妃と子供達一行、それに俺だ。


「ここから火山まで、雑魚を片付けながら進みたいが時間が惜しい。転移するぞ」


火山に向かうのは、天空の神々と子供達一行と俺。

それ以外の者は、御伽の国を死守する。


神々が転移したのを見届けると、アリスは口を開いた。


「カーラ、ローラ。安心していいわ」

「あんた何言ってんの!?全然安心出来ないわよ!」

「あら、本当よ?この国は、不滅の国になったのよ。今だけ!」


虚空崩壊(神竜の庇護下だから)


空を斬るアリスの指先。

紅く光る瞳が見据える先には、終末の兵士と思しき無数の反応が有った。


「!?……音が消えた」


目も開けられない程の閃光が治まると、有った筈の森や山は消え去り、見渡す限りの更地に置き換わっていた。


音さえも消し去るアリスの破壊の力。


「ちょっ!!あんた一体!?」


カーラは、あんた呼ばわりしている女性が、竜王バハムートである事を知らない。

そして、あんた呼ばわりした事を後悔する日が来る事も、まだ知らない。

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