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第107話 御伽の世界16 VS桃太郎 中編

迫る必殺の斬撃。

満身創痍となるも立ち上がるクロエは、戦いの中で死ぬ覚悟を決める。

しかし、斬撃以上の惨事がすぐ傍にあったのだ……

クロエに迫る必殺の斬撃。


まさか……こんな厄介な奴が居るなんて……

パパ…ママ…ごめんなさい……


”蛟龍”が直撃し、吹き飛ばされたクロエは城壁に叩き付けられ意識を失った。

時間にして、凡そ6秒程だろうか。


(私 生きてる?フェニックスの外套のおかげかしら……)


何とか身体を起こすも、全身激痛で悲鳴をあげている。

満身創痍だ……2発目を食らえば確実に死ぬだろう。しかし、戦わずして死ぬ気などない。

せめて、王女としての誇りと共に……

立ち上がろうとしたクロエ。ふと横を見ると、そこにはムックが倒れていた。


「ムック…ちゃん……?」


クロエが抱き上げた時、既にムックは死んでいた。

徐々に消えていくムックに、クロエは回復魔法を掛け、月の瞳で再生を試みたが効果は無かった。

そして、震えるクロエの腕の中で完全に消滅した。


”ムックちゃん?ムックちゃんは私が守ってあげる!だから、戦わずに私の傍に居たらいい!オッケー?”

”うん!わかったー//”


「何で……」


クロエはムックが大好きで、ムックはいつも構ってくれるクロエが大好きだった。

ゴハンも一緒に食べて、毎日一緒に眠りについた。

従者にしたものの、今回も含めて戦闘に参加してもらいたいと思った事など無かった。

何故?それは、失いたくなかったから


でも、もうムックは居ない


私の代わりに死んだのだ。


「御伽の世界の星空も意外と綺麗ね……」


ムックと過ごした日々を走馬灯の様に思い出すクロエは、御伽の世界の夜空を見上げていた。


本体が消滅した事で、連絡用として地上世界や魔界、神界に無数に居るムックも消滅し、各国の王達や天空の神々は旅行先で何かが起こっている事に気付いた。



…………………………………………………


俺は、山の麓にある古い城に到着していた。

その城は、アリスだけでなく城そのものが茨に覆われていたのだ。


城の入口では、不思議の国の女王アリスが放った刺客と思しき騎士が、必死で茨を払っていた。


「おい、何してんだ?」

「ん?貴様は誰だ?まぁいい、俺は城の中で眠る女をくれてやるとアリス様に言われて、此処へ来たのだ。手伝え」

「…………」

(この世界は、こんな奴等しか居ないのか……)


俺は雷を落とし、騎士と茨を葬った。

そんな騎士ぐらい、少しシバいて追い払えばいいのにと思われるかも知れないが、俺は優先順位を間違ったかも知れないと、正直かなり焦っていたのだ。

状況からして、前世の記憶通りなら”いばら姫”が眠っているはずの城だ。

最初に到着するのが俺なら、アリスにキスをして眠りから覚めるハッピーエンドだが、別バージョンが在るのをご存知だろうか。


それは、いばら姫が起きないパターンだ。


城に辿り着いた何処かの王様は、いばら姫を見付けキスをするも起きない。

そして、起きないのいい事に性的暴行を加え、そのまま放置して引き上げてしまう。

その後、眠りながら出産した双子の赤ちゃんに起こされるという身の毛もよだつ結末だ。


魔女と仲良しの何者かが送り込んた刺客だ、やりかねん。


最上階の部屋に入ると、アリスが眠っていた。


「旦那様……起こして……//」

「………ん?…え?!」

「起こして!//」

「…………」


結構前から起きていた様だ。

心配して損……してはいない、無事で何よりだと心の底から思った。


そんなアホな事をしていた時、俺と行動していた赤ムックの分裂体が消滅したのだ。


「……ムック、赤ムックはどうした?」

「死んじゃったみたい……」


黒ムックは声は、それが事実であると理解させるには十分過ぎるほどトーンダウンしていた。


………………………………………………


ムック死亡の報せは、黒ムックにより即座に伝えられた。

静寂に包まれる魔王城の一室には、残った幹部が王子オリオンの指示を待っていた。


「オリオン、第3陣はいつでも行けるぞ?」

「王を拘束したばかりか、王女の従者を殺害したのです。最早、考慮の余地は皆無かと……」


苛立つ幹部達に、オリオンは言った。


「第3陣の派兵は見送る。派兵するとすれば、それは父さんが死んだ時だ。

その時は大幅に兵力を増強し、焦土作戦を展開する」

「しかし……」

「お前達に1つ聞きたい。サタナス国の軍事力で魔王を討てるか?」

「「…………」」


黙り込む幹部に、オリオンは言った。


「さすがの魔王と言えど無傷では済まないだろう。しかし、例え手負いになっても戦い続ける。そして、最終的には皆殺しにされるだろう」

「……仰る通りです」

「父さんとムックは、俺が生まれる前から主従関係だ。本体はクロエに譲渡したが、その存在は家族だ。

何が言いたい分かるだろ?」

「…………」

「もう終わったんだよ。御伽の世界は」


魔王軍に個人で対抗出来る魔王。

竜王を含む王妃3名とその子供達。

強力な従者に邪神界の女神数名、それに、幹部数名と10万を超える兵力を送り込んでいるのだ。

どう考えても過剰だ。

なので、第3陣を派兵する時とは、即ち黒ムックの分裂体が消滅した時なのだ……

赤ムックが死亡したという事は、クロエの身が危険だという事でもある。

他の王子の身も危険かも知れない。

派遣した部隊にも多数の死傷者が出ているかも知れない。

だが、自信を持って言える。

魔王の死。


それだけは絶対に無い。


……………………………………………



「ゼウス様。優秀な人財(子供達)が御伽の世界で揉めている様ですが……」


ゼウスにお伺いを立てる超絶美人さん(世界の意思)は、ゼウスは動かないと思っていた。

前回の邪神降臨でさえも、渋ったぐらいだ。

(愚か者め……貴様が動かないなど分かっている!例え懲罰に処されようとも、私は御伽の世界へ行きクロエちゃんを助けますわ!)


「管轄外だが出向くとしよう。

そもそも、御伽の世界は神に捨てられた世界だ。誰にも文句言われねぇしな」

「ゼウス様……」


今回、ゼウスが渋る事はなかった。

しかし、その目的はクロエと桃太郎の戦闘に介入する為ではないのだが……


神界が動き始めた頃、俺は3人の妻達と転移魔法で魔女の城へ戻っていた。

一度行った事のある場所にしか転移出来ないチートな魔法……

チートだが、相変わらず何処か不便でもどかしい魔法である。


そして、転移した俺達が見たのは目も覆いたくなる惨状だった。


辺り一面に転がる、頭部の欠損した鬼達の死骸……

四肢を切断され、達磨になった桃太郎の首を鷲掴みし吊し上げるクロエの姿……?


「……パパ?どうしてなの?」

「……黒い…天使の羽?」



城に戻った魔王が見たのは、返り血に染まり黒い翼を纏うクロエの姿であった。


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