第103話 御伽の世界12.5
補足の様な内容です。
シンデレラが自害し、騎士団の抵抗は終わった。
傷を消し、溶けない氷の棺にシンデレラを横たえるエキドナ。
その様子を眺めながら、ラクレスは思うのだ。
波乱に満ちたシンデレラの人生、この結末は……
答えは、考えうる全てだ。
良くも悪くも。
正解でもあり、不正解でもあるだろう。
そんな、心ここに在らずのラクレスに、エキドナは質問を投げ掛けた。
「ラクレス?シンデレラの魂は何方に行ったのでしょうね。天国か……地獄か」
「そんなの決まってるよ。地獄さ」
騎士団は、ラクレスに礼を言うと、シンデレラと共に国へ帰って行ったのだった。
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武闘会の参加者は、一癖も二癖もある猛者ばかりだ。
そんな頭のネジが外れた連中からすれば、その会場は示威活動にはうってつけの舞台となる。
浦島太郎とガッジという奴は単身だったが、それ以外の連中は、それこそ、此れ見よがしに大軍を引き連れて来ていた。
そんな大軍が城下町に収まる訳もなく、大半は城から離れた場所で野営していたのだ。
第2陣に、そんな連中が押し寄せていた。
周囲を警戒する兵士達は、夥しい数の反応を探知していた。
包丁を持った、何とも悍ましい顔をした女達の集団。
それは、鬼に連れ去られた者の末路。
鬼女だ。
「此方B2、前方に多数の魔力反応を探知」
民間人か否かの確認は大事だ。
”B2、目標を確認した。
攻撃を許可する”
毎分12000発の速射性能を誇る自走式魔導機関砲の掃射が終わると、前線に居る特殊部隊による撃ち漏らしへの直接打撃が加えられる。
1人として逃走する事は許さない。
現在使用しているのは、ミスリル製の弾丸。
それを、魔力で発生させた電力を使い、電磁誘導で加速させレールガンの様に発射している。
後方支援とはいえ、魔王軍が何故こんなにチマチマやっているかと言うと、1つは陣地の隠匿だ。
(もうバレてしまったが)
そして、もう1つは魔力の温存である。
魔力量の多い魔導機甲師団所属の兵士は、ミスリルの代わりに魔力弾を装填して撃ち出す事が出来る。
上位の兵士が、本気の広範囲殲滅用魔力弾を用意すると、1発が3~5kt程の威力を発揮し、且つ連射出来る。
勿論、消耗は激しいが相手国は滅ぶだろう。
今回は、異世界での戦闘なので何が起こるか分からない。
なので、魔力弾は使わずに、雑魚は物理攻撃で始末している。
ミスリル弾が切れてからが、本領発揮なのだ。
「此方D5、エリア外に複数の巨大な魔物を確認。攻撃許可を」
”D5、防御結界を展開し即応態勢を維持せよ。
戦略長距離砲を使用する”
前進陣地から10km程先に、体長40m以上有りそうな巨大な鬼が現れたのだ。まさに山の如しだ。
さすがに、魔導機関砲では心許ないという事で、有効射程2000kmの魔導電磁砲の出番である。ミダスの自信作だ。
因みに、これの初期型を使い、ミダスは世界征服を目論んだ。
宣戦布告もせずに、プティア王国の城へ砲弾を撃ち込んだのだから嫌われて当然だ。
今回は、最新鋭のものを敵の軍事施設を破壊する目的で数機搬入した様だが、まさか魔物相手に使うとは思わなかった。
砲撃が開始され、砲弾が直撃した”鬼”は跡形も無く弾け飛んだかに思われた……が、どうやら”鬼”はとても頑丈だった様だ。
「此方D5、魔物は再生し前進を続けている。魔物は生きている」
”此方、司令部。
前進部隊B~Eに告ぐ、撤退せよ。
90秒後に魔力砲弾を使用する。
繰り返す。前進部隊B~Eは撤退せよ”
今回、10名程の兵士が魔力を込めて創り出したクリスタルの様な砲弾の効果は、熱線・衝撃・封印。
魔導電磁砲に装填され、発射された砲弾は、複数の巨大な魔力反応の上空で猛威を振るった。
直撃する必要などない。
鬼達の方へ大気が集まる様に移動した直後、目も眩む線光は一気に膨張し、巨大な火柱を伴う大爆発を起こした。
「此方A6、目標の消滅を確認」
”了解。引き続き哨戒せよ”
砲弾は上空で炸裂したにも関わらず、直径10km程のクレーターになっていた。
封印の効果を付与し、範囲を限定したおかげで目も眩む光以外は殆ど抑え込まれているが、それが無ければ大惨事だ。
この様に、第2陣はとても順調に敵戦力を削っていたのであった。
順調に敵勢力を消耗させる後方支援部隊。
その頃、城では冥界の王子ディオニスと魔王の右腕ベレトが強敵を相手取っていた。