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第100話 御伽の世界10

難を逃れた妻達だったが、不思議の国のアリスに転移させられ、離れ離れになってしまう。

各地に飛ばされた妻達を救う為、魔王は大急ぎで走り出した

不思議の国。


倒壊した城を眺める4人と猫。

襲い掛かってきたトランプはおろか、兎も女王アリスの姿も無い。

竜王アリスの一撃は、全てを吹き飛ばしてしまったのだろうか。


「困ったな……」


結局、出口が何処なのかは分からないまま。

せめて、女王アリスが生きていれば……そんな事も考えたが、どうせ道に迷わされるだけだろうと思い、4人と猫は諦めて歩き出した。


しかし、女王アリスは瓦礫で身動き取れなくなっていたものの、生きていたのだ。

クイーン グリムヒルデから、女達を死刑にするように言われたが、その女達は只者ではなかった。


”早く、国から追放しなくては”


地上に出ようと彷徨う女達だが、出口が見つからなければ、更に暴れる事など容易に想像出来た。


恐らく、攻撃を仕掛けて来たアリスと名乗る無礼な女と、粗末な装備の猫は従者だろう。

涼しい顔をして、結界の中で高みの見物をしていた2人……その、どちらかが主に違いない。

せめて、主を葬りたいが……


立ち去る一行を眺めながら、女王アリスは考えていた。


”…………無理だな”


早々に諦めた女王アリスは、追放ついでに、女達をバラバラに転移させる計画を思い付く。

自分の息のかかった配下の元へ送り込み、始末させるのだ。



………………………………………


魔女の寝室では。


ビンタ乱舞を見舞い、ストレス解消した魔女は、誰かと念話で話している様だ。


「お前を処刑しようと思っていたが、”ある”仕事をこなせば、引き続き情夫として飼ってやってもよいぞ?」

「……な…何を…したら…いい?」

「お前の妻達は、まだ生きているそうだ。

妻達を殺しておいで。

そうすれば、また優しく接してやろう」

「……分かっ…た」


どうやら、妻達は地上に出られた様だ。


魔女は、俺に逃走防止の首輪を付け目的地を告げる。

その首輪は、無理矢理外そうとすれば大爆発し着けている者の命を奪う。


「彼奴の送った刺客だけでは心配なのだ」


3人は別々の場所に転移させられ、それぞれに刺客が差し向けられているらしいが……

自らの手で妻を殺させたいのか、それとも妻の死を目の当たりにさせたいのか……

どちらにしても、良い趣味だ。


城を飛び出した俺は思考操作を解除し、黒ムックを使い、妻達の場所を確認した。

口頭で場所を言われても分かるわけねぇだろ!!って話である。


ディーテは、草原。

アリスは、山の麓。

リリアは……城下町?


俺は、一夫多妻制だ。

その恩恵は大きいと感じる事が多い……しかし、それは平時のみなのだ。

この様な緊急事態では、デメリットの方が顔を覗かせる。


愛する者を助けに向かい、無事助け出す物語。

そんなハッピーエンドな物語は数多く存在する。

しかしどうだ?

危機が迫る姫3人を、ほぼ同時に救出しなくてはならない物語。

少なくとも、俺は聞いたことが無い。


物語によく出て来る”ある国の王子”とかなら、お姫様1人助けるのが限界かも知れない……

だが、俺は魔王だ。

愛する妻を、誰一人として死なせはしない!!


「ムック!状況は!?」

「アリス様は、変な城の中で眠っていますー。その内、茨に包まれて絞め殺されちゃいますー」

「なっ!?」

「リリア様は、城下町の娼館ですー。浦島太郎に乱暴されそうになってますー!!」

「クソがっ!!アイツ絶対ぶっ殺す!!」

「ディーテ様は、大きな狼の魔物に包囲されてますー。子ブタ達と戦ってますー!」

「…っ!!マジか!」


優先順位的には……


先ず、リリアだ!!



その頃、妻達は。


3人は危機的状況に置かれていた。


「眠い……何でこんなに眠たいの?」


その美しい肌に絡み付く茨……

少しづつ、少しづつ……茨はアリスを包み込んでいた。


「お前は、銀髪の嫁じゃないか!何故此処におるんじゃ!?

……まぁいい、高い金を払った甲斐があったわい!!死ぬまで可愛がってやるからのう!!」

「イヤァァァ!!」


素っ裸の浦島太郎が、恐怖に震えるリリアに迫っていた。


「ブタさん!煙突から狼入ってきたぞ!!」

「奥の部屋に逃げて!!」


草原で目を覚ましたディーテは、巨大な狼に襲われそうになり、頑丈そうな家に住む子ブタに匿ってもらったが、狼は煙突から難無く侵入してしまった。

扉を破壊されるのは時間の問題だろう。


その時、3人は同じ事を考えていた。


”大丈夫……旦那様が助けに来てくれる……

私の元へ一番に駆け付けてくれる……”


3人が3人とも、自分の元へ一番に来てくれると信じていたのだ。


………………………………………



魔王が城を出てから、3分後。


城から12km程離れた森の中に、巨大な(つるぎ)がもう一本舞い降り、突き刺さった。


地面に魔法陣が光り輝き、大勢の兵士が現れる。

第2陣の到着である。


第2陣を指揮するのは、幹部のスキアとビオン。


第1陣を転移させた剣は消失してしまったが、第2陣を転移させた剣は撤退まで消える事はない。

2人は、すぐさま陣地の確保を始めた。


剣がある地点を主要陣地とし、司令部と野戦病院的な治療施設の設営。防御部隊を待機させる。

その主要陣地から10km地点を前進陣地とし、特殊部隊所属の魔導歩兵小隊と空挺部隊から成る前進部隊が警戒と敵勢力の侵入を妨害。

前進陣地と主要陣地の間、凡そ5kmの地点を警戒陣地とし、多数の自走式の魔導兵器と魔導歩兵大隊、そして防空部隊を配備し、前進部隊の攻撃支援や撤退の支援を行うのだ。


展開を始めた第2陣は、瞬く間に周囲の魔物を制圧し、道路を占領……陣地周囲の高台には狙撃部隊も配備され、少数で動く敵勢力も見逃さない。

ものの30分程で一帯を占領し、第1陣の帰還に備えた。


城に突入しようとしていた子供達は、ベレト率いる魔王軍第1陣と合流していた。

森には、1万もの兵士が潜伏しているのだが、そこに聞こえるのは風に揺れる木の枝の音だけ。


「城の両翼と裏手から侵入するわ。」

「了解しました。2分後に”操敵”を開始します」


王子と王女が城へ向かった2分後、魔王救出作戦は本格的に開始された。

魔王が魔女の城を出てしまった事など知る由もない子供達。

そんな子供達の前に、御伽の世界の猛者が立ちはだかる……

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