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第10話 国を近代化しよう!其の四

数日後、魔界に魔王オルフェ夫妻がやって来た。


「グルナ、来てやったぞ」

「まだ何も無いけど、色々見て行ってくれ。接客の練習相手とかも気が向いたらお願いしたいな」

「寧ろ、その為に来たのだ。珍しい店はないのか?」


あっちの世界に無いのは、ラーメン屋ぐらいだが、お気に召すだろうか。

早速、案内しラーメンを食べてもらう事になった。メニューは、濃厚海老味噌ラーメンと魔界牛骨ラーメン。

チャーハンと餃子のセットもある。

店の臨時店長はアレスだ。


「いらっしゃいませーーー!!!!」

《しゃんせーーーーーー!!!!》


みんな元気だ。声はデカいが怒鳴ってる様な感じではない。

相手は悪そうな魔王だが、店員は特に気にする様子もなく、笑顔で席に案内する。

直ぐに、水とおしぼり、メニューが用意され…注文の仕方の説明が入る。


「では、濃厚海老味噌ラーメンを2つ頼む」


麺の量と硬さの調整が出来ることを伝え、好みを確認するのも忘れない。厨房にオーダーが通るとアレスは張り切る。


「ありがとーーうございまーーすッ!!!」


そして、服が汚れない様に簡易の使い捨てエプロンが渡され、ラーメンが配膳される。

テーブルに置いてあるコショウやニンニクモドキ等で味を調整出来る事も、自分の言葉で伝えている様だ。


「旨っ!!」

「美味しい//」


客が食べている間も、店員が無駄話する事は皆無。

ホールスタッフは常に客に集中している。


「デザートは無いのか?オススメは?」


アイスクリームが数種類、魔界の果物がある。どうやら柑橘系のアイスクリームを勧めているようだ。

無事に食事が終わり、オルフェ達が店を出る時の挨拶も完璧だ。

因みに、この日のお会計は大銅貨2枚。日本円で2000円程。


「オルフェ、ありがとな。みんないい経験になったと思う」

「……グルナよ、アレスは仕込みもやっているのか?」

「ん?やってもらってるぞ」

「魔界の店が落ち着いたら、アレスをヘルモス王国へ派遣してくれ。貸店舗を用意しておく」


気に入ったようだ。

その日の夕食は、城で魔界の魚を堪能してもらい、翌朝は喫茶店で朝食をとってもらった。


オルフェは、刹那と結婚する前、かなりの頻度で森の国を訪れていたので喫茶店もよく利用していた。

魔界の喫茶店も似た様なメニューだが、それではつまらないので、魔界限定メニューとして”メルティショコラカフェ”を追加している。


「!!?美味しい//」


それに刹那がハマってしまったのだ。

ファムに頼んで輸入した高級珈琲豆モドキで淹れた珈琲に魔界の魔牛の乳を多めに入れ、特製チョコレートを溶かしながら楽しむ魔界限定メニューだ。

特製チョコレートは、あちらの世界の女王達が研究して作った逸品。

各店舗でフレーバーを変えているので、好みの味を探すのも楽しみの一つとなるだろう。


「今後が楽しみだな。しかし、行き来が不便だ」


今は、俺が魔界転移門(デモン・ゲート)を開かないと行き来出来ない。安全を確保出来れば、互いの住民も行き来出来ると思うので何とかしたいものだ。

移動手段は引き続き検討するとして、もう1つの課題は入管業務だ。まだ、あちらの世界では悪魔達の印象は良くないだろう。慎重に進めないといけない。


着々と開店準備が進む中、アザゼルは考えていた。

(わたちも、自分のお店を出ちたい…)



………………………………………………



オルフェ達が帰った後、アザゼルがやって来た。

モジモジしている…どうしたのだろうか。


「グルナしゃま。わたちもお店を運営ちたいでしゅる」


ひたすらモジモジしている…何と可愛らしい…

とにかく、話を聞いてみる事にした。

アザゼルがやりたいのは飲食店ではなく物販の様だ。

アザゼルの軍資金は、頑張って貯めた金貨50枚。

日本円でいえば250万円程だろうか?店の規模にもよるが、正直少し足りない。


「グルナしゃま…」


…ウルウルしている。

言っておくが、俺はバカ親だ。

我が子の様なアザゼルの出店を手伝う事にしたのだ。

俺がオーナーとして出資する事になり、どんな店にしたいか話を詰めていく。


「あっちの世界には無いお店にしたいですのん♪」


少しずつ進めて行く事になり、アザゼルは森の国へ働きに行った。

少しでも俺の負担を減らしたいそうだ。

健気である。


「グルナ様、明日は住宅地の視察と焼肉店の内装について打ち合わせが1件入っています。その後は、宿泊施設の備品の件でファム様と商談が1件です」

「商談の後に、フルフルと検討したい案件がある。時間を取るよう伝えといてくれ」

「承知しました。明日9時半にお迎えにあがります。ではおやすみなさい♪」


リリアも大分慣れて来たようだ。

寝室に行くと、俺のベッドに何者かが寝ている…

はて、誰だろうか…アザゼルは一緒に寝ているが、今は森の国へ働きに行っているので当分帰って来ないはず。

布団を捲ると、そこに居たのはメリアである…


「おい、メリア?そこで何してるんだ?」

「グルナ様おかえり♪暫くアザゼルちゃんは戻らないんでしょ?代わりに僕が一緒に寝てあげようと思って待ってたんだ♪」

「…………………」

「…メリア。有り難いが、たまには1人で寝るのも悪くない。気遣いは無用だ」

「えーー!?一緒に寝ようよ!」

「ダメ!嫌!」

「アザゼルちゃんとは一緒に寝るのに、何で僕とは一緒に寝れないの!?」


これは不味い…お引取りいただくのに時間が掛かりそうだ。

言い合いをしていたら、メリアは黙ってしまった。怒ったのだろうか?


「分かった!僕とアザゼルちゃんは背丈も同じぐらいだから、つまらないんでしょ?分かったぞー♪」


つまるとか、つまらないとかでは無いのだ。

メリアは危険物…寝る時ぐらい平穏が欲しい。

しかし、メリアは断られる原因を完全に勘違いしてしまっている。

そして、勘違いしたメリアはナイスバデーの大人のレディの姿に変化した。


「どう?//」


バカか。どう?じゃねぇよと言いたい。

こんなアホなやり取りを続けていては永久に寝れない。


「分かった。分かったから兎に角、元の姿に戻ってくれ。一緒に寝よう…でも、アザゼルが帰って来たら、その役目はアザゼルに戻るぞ?」

「うん♪グルナ様って焦らす派?嫌よ嫌よも好きの内ってやつだね♡」

「……………」


一緒に寝る事になったが、案の定、メリアの腕力は非常に強く…息苦しさで睡眠不足になったのであった。


その後、店も順調にオープンしていき、住民達も休みの日や出勤前、仕事帰りに利用している様だ。

住宅の建設もかなり進み、温泉旅館の建て替えや宿泊施設の建設も終わりが近い。

特産品の開発やサタナス国の名物等、徐々に取り組んでいる。いい物が出来るだろう。

課題の1つである魔界での貨幣の流通については、周辺国の王や家臣達にも、お金を渡し実際に店を利用させて便利さを理解してもらったのだ。


そして、1年後。

店の運営も魔界の住民達だけで回せる様になり、起業する者も現れはじめた。

俺が魔界を初めて訪れた時は、原始時代の様だった国は見事に整備され、太陽石が煌めく夜の都へと変貌を遂げたのであった。


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