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6代目総長の極めし道  作者: ジロ シマダ
26/32

尊はやはり巻き込まれる

 六本木本部大会議室、いつものように幹部が集まり会議を行っていた。スムーズに進む会議を邪魔するように、(さかえ)の携帯電話が鳴り響く。静かな会議室ではよく響くもので音の大きさに(さかえ)の手は慌てふためき、なかなか携帯電を取り出せない。 


 「あんこ! マナーか電源切っておくのが常識だろ」

 「うるせぇ! へちま!」


(さかえ)(ひじり)に悪態つきながら(たける)にペコペコと頭を下げ、耳に携帯電話を押し当てた。(ひじり)は小さくぶつくさ、ぶつくさ言いながら(たける)

 「(こいつだめでしょ)」

という顔を向ける。



 「はぁ!? なんだと! それで!」


 (さかえ)が電話にはあるまじき大声を発した。隣に座る湖出(こで)還田(かんだ)咄嗟(とっさ)に耳をふさぎ(さかえ)を睨みつけた。電話を切られるのを見て、(たける)が声をかければ(さかえ)

 「大したことはないです」

と前置きしながら内容を報告した。



 「品川ふ頭で組のもんが銃で撃たれました。腕掠っただけです」

 「誰にやられたんですか」

 「知らないやつだと」


(たける)はじっと(さかえ)を見つめるが(さかえ)は下を向き目を合わせようとしない。(たける)やほかの幹部は何か隠しているなと(さかえ)の頭を見続けた。数分、(とき)が流れ(さかえ)は観念した。


 「日本から逃れる奴に‥‥‥すいません!」

 (さかえ)は中央に出て(たける)に頭を下げ、幹部たちは(たける)激怒(げきど)する案件だと心を構える。しかし、(たける)は首をかしげるだけだった。たまらず(さかえ)も首を傾げた。


 「総長、高飛びさせていたということですよ」

隠岐(おき)がまさかわかっていないのかと不思議に思い教えるが、(たける)は逆方向に首を傾げるだけ。


 「だから?」

 「えっ?」


この反応には大会議室にいるものすべてが目が点だ。てっきり(たける)

 「犯罪者を海外に逃亡させる片棒を担ぐな」

と怒り出すと思っていた。


 「えっと、犯罪者を海外に逃がしていたんですよ」

 「組のものがカタギに迷惑かけたりするのは許さないけど、その辺の犯罪者はどうでもいいですよ。ばれないように逃がしていればいいです」

 「そうですか」


頬杖を突いて、そういう(たける)を見れば心の底からどうでもいいとがわかる。


 (たける)はすっと顔をまっすぐに戻すと目の前で間抜けな顔をしている(さかえ)を見た。(さかえ)も真剣な目に背筋を伸ばす。


 「飛ばそうとした犯罪者の名前は」

 「福田(ふくだ)隆太(りゅうた)というやつです」

その名前に(たける)と黒木が反応し隠岐(おき)はその小さな反応を見逃さない。


 「知っているやつですか」

 「知っていますよ。これも何かの(えん)かな? ねぇ、黒木」

(たける)は面白いこともあるものだと笑い後ろに立つ黒木に同意を求めれば、黒木は眉を上げ困った表情を

する。


 「(えん)ではなく総長のトラブル吸引体質のおかげではないかと」


 黒木の返事に(たける)は不服そうに口を尖らせ睨みつけるが黒木は慣れたように受け流す。(たける)は自分がトラブルを引き寄せやすいことは何となく察してはいるが還田(かんだ)にまで頷かれるとは思っていなかった。そして、隠岐(おき)が面白そうに笑っているのも(たける)は面白くない・・・・・・が、何も言い返せない。


 このようなことで拗ねている場合ではないと(たける)は意識を切り替える。切り替えれば、やはり怒りが沸き上がる。


 「まぁ、(さかえ)組の組員とはいえ傷つけられて黙ってはいられないよね」


総長席から立ち上がり足取り軽く、中央を歩き扉に向かう(たける)に黒木、隠岐(おき)還田(かんだ)湖出(こで)はすっと後に続く。開いた扉の向こうから(さかえ)(たける)が呼んだ。


 「(さかえ)、落とし前つけに行くぞ」

 「っ!? はい!」


(さかえ)は大きな体をゆらし、慌てて追いかけた。

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