表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

屋敷の罠


 「この屋敷に暮らす者なら知っていることですが。実は亡くなった旦那様は屋敷の中に様々な場所に罠を仕掛けているんです。どんなところにどんな仕掛けがあるのかも多くは知らされておりません。普通に暮らす分には支障はありませんが。昔屋敷の金を盗もうとした者が仕掛けにかかって手首を落とされたことがありまして、他にも押し入った泥棒が死んだこともあります。罠は特定の行動に対して働くものと聞いています」


 「なるほど・・・ところであの通風口にはどんな仕掛けがあるのでしょうか」


 「実は3日前に仕掛けが発動したんです。ちょうど前で掃除をしていたら音と明かりが射したんです。侵入者を炎の力で焼き尽くす罠のようでした。廊下まで熱風が来て凄かったです。でも死体らしきものも見えず、ネズミか何かが通ったのではないかとなってました」


 「発動条件などはわかりますか?」


 「詳しい仕組みはわかりません。なんでも精霊と契約を交わしている力だとか」


 精霊との契約による罠か。発動条件を満たせば作動する。侵入するとか物を盗むとかか。


 「実際に調べてみますか」


 こうして廊下の奥の通風口へと皆で向かったのだ。


 廊下の奥の行き止まりの壁に通風口はあった。上のほうについているが側のイスに上がれば誰でも中を覗き込むことはできる。


 「暗くて良くは見えないな」


 直線で10mほどか。暗くて見えない。


 「ライト!ほら明かりじゃ」


 光の球体で中を照らし出す。確かに中には何もないようだ。


 「うーん。これだけでは何とも・・・。中に入って罠を発動させられないか・・・」


 しかし・・・狭すぎて子供しか通れないな。ノエルさんなら通れないこともなさそうだが・・・。


 「私に任せてみませんか」


 この声は人形遣いのカミールさんだ。


 「この人形は東の国のからくり人形と呼ばれるものです。螺子を巻くと真っ直ぐ進むことができますよ」


 「おおっ、ありがとございます!」


 試しに床に置いてみると進みだす。これは使えるな・・。。


 「ではここから歩かせてもらっていいですか。私は向こう側から見てみます」


 こうして実験が始まったのだ。


  殺害現場へと戻り通風口を覗いてみる。辛うじて向こうが見えた。


 「いいですよ!始めてください!」


 声は届いたようだった。からくり人形が歩き出す。


 ちょうど中ほどに差し掛かったことろだろうか。炎が吹き荒れ一瞬で熱波が駆け抜けぬける。


 「おおおおっ」


 熱風でイスから転げ落ちそうになる。危ないところだった・・・下手をすれば死体の海にダイブしていただろう。しかしこれでわかった。侵入すれば丸焼けになりフゴーさんにも派手に見つかってしまう。


 「・・・・・もしかしてフゴーさんの言っていたのは・・・」


 実験の結果、このルートを使うことはかなり難しいように思えた。となればドアからなのか?ダンさんや僕達の目を盗んで侵入したとでも?そちらのほうが難しいような気がする。捜査はまた暗礁に乗り上げてしまったようだ。


 皆と大広間に戻ると、ちょうどそのとき大広間の真ん中で火柱が上がった。


 火柱から現れたのは炎の精霊イフリートだった。


 「失礼、人族の者たちよ。我は炎の王イフリート!今回は契約に基づき3度にわたり回廊を守ったゆえ、契約の終了を宣言する。なお契約の続行に関しては契約者が死亡しているがゆえに行えないものとする。それではまたのご利用をお待ちしているぞ!」


 そう言い終わると炎が四散して消えてしまった。案外フランクな精霊だったな・・・。


 「どういうことだろう・・・あの通風口の炎は3回発動したことになる。ついさっきと3日前のネズミ騒ぎと他に1回・・・」


 「アリッサさんあの罠はもっと以前に発動したことがありましたか?」


 「いえ・・・そもそもあの罠は1週間前に導入されたばかりなので」


 「1週間前ですか?それは確かなんでしょうか」


 「間違いありません。珍しくご主人様が家人全員に告知していましたから。赤色神殿の神官様と何やらやられておりましたし・・・」


 「間違いねーぜ」


 ウルフィーさんも同意する。


 「となると今回の事件の最中に発動している可能性もあるわけですか・・・」


 余興中ならば多少の音は気づかないから十分可能はありそうだ。


 「やっぱり中もしっかり確かめてみたいけど・・・・・」


 「ちょっといいかの?」


 マジックさんだ。


 「取り込み中のところ悪いがの、話を戻すがあの娘が犯人と言うことでいいかの」


 「いやそれは早計過ぎます。大体あの通風口には罠がありましたから」


 「じゃが!ずっと姿が無かったのはあの娘だけ!あの娘が怪しいと言うことは変わりあるまい。エルフの秘術を使って罠をごまかしたに違いない!」


 「何よ!エルフの秘術って!私はハーフエルフよ!そんなの知るわけないでしょ!大体私はずっと部屋にいたのよ!」


 「ええい五月蝿い!静かにせんか!神官殿。提案なんじゃが娘の部屋を調べてみんか?何か良からぬ証拠があるかもしれんし」


 「それは・・・」


 案外良いかもしれないな。この流れで調べてしまうか。


 「ちょっと勝手に決めないでよ!」


 「まぁまぁ。何もないなら良いじゃないですか。あなたの無実を示すことにもなりますし」


 こうして強引に話をまとめてしまうとゾロゾロとノエルの部屋に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ