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事件発生


 柱時計が0:00を告げる。日付が変わり犯行予告時刻を過ぎてしまったが特に変化はない。


 ・・・・・・


 ・・・・


 ・・


 もう犯行予告を10分過ぎている。今だにフゴーさんが現れないのはどうもおかしい。


 「フゴーさん!」


 ドンドンと扉を叩いてみるも反応がない。


 「ダンさんちょっと中に入らせてもらってもいいですか?」


 「・・・ああ・・・・」


 預かっていた鍵を懐から取り出すと鍵穴に差し込んだ。ガチャリと開錠の音がする。


 「フゴーさん入りますよ!」


 おそるおそる扉を開けると驚くべき光景が目に入った。


 「うっ・・・」 


 部屋に入ると咽かえるほど血の匂いが充満している。5m四方の書斎の真ん中で肉塊が転がっていた。見事に大小バラバラになっており、ある程度原型を留めていた頭部からフゴー氏であることが確認できた。


 「うわぁぁぁ、キャァァァ!」


 悲鳴が飛び交う。


助けようにも・・・すでに助ける余地すら残ってないように思える。ホイルさんに目配せしても首を振るばかりだ。治癒不可能だと・・・。


 「皆さん動かないで下さい。これは殺人事件です。物にも触れないで!」


 現場保存を優先する。しかし本当に殺されるなんて、一体誰がいつ・・・。


 「実戦なんて初めてなんだけど・・・」


 とりあえず現場検証を始めてみた。


 捜査するにあたって何が必要か・・・。火サスとか名探偵が活躍する漫画の記憶を思い出す。


 「やっぱり死亡推定時刻とか殺害方法とか凶器とかアリバイかな」


 死体はグロテスクな仕上がりなのであまり見たくない。とりあえず室内を見て回ることにした。注意深く見てみるも床と違って壁や周囲は特に変わった様子もなく綺麗に整頓されていた。丹念に事件の痕跡を探るが小さな血痕すら見つけられない。


 そして見上げると壁に例の通風口がある。手を伸ばせば届くし、近くのイスに上がって調べる。サイズは30cm四方で頑丈な鉄格子が5センチ間隔でしっかりはまっていた。手で引っ張ってもびくともしない。覗き込んでみるも、特に変わったものはなく奥も暗くて見えない。


 「扉以外で外部と繋がっていそうなところはここしかないけど鉄格子もあるしな・・・。子供や小柄な女性なら鉄格子前までは来ることが出来るかもしれないけど・・・」


 入口は常に見張られていて死体発見まで誰も入っていない、壁には抜け穴はなさそう、通気口は鉄格子やサイズ感で侵入不可、つまりこの部屋はほぼ密室と言っていい状態だった。ちなみにドアも隙間がなく、定番の糸やらなんやらの痕跡もない。


 自殺とは考えられないし・・・・やはりこの通風口が犯行と関係しているのだろうか。


 続いて死体を検分する。あまり直視できないからさらっと済ませる。まず床一面に大量の血痕。おそらく殺害現場はここでいいはず。死体は損壊が激しく服ごと大小様々なパーツに分かれて辺りに飛散している。さらに辛うじてわかるが頭部は2人分確認できる。顔や手・足・指など確認出来たから死体は2人分確かにある。フゴーさんとロビンさんで間違いないだろう。


 ちなみにロビンさんの剣は鞘に収まったまま転がっている。抜く暇はなかったようだ。


 殺害方法は見当がつかないが傷口も歪なので刃物で切断されたとは思えない。これは早計かもしれないが・・・おそらく魔法による殺害ではないだろうか。道具を使えば返り血や作業時間などクリアすることが多すぎると思われる。おそらく風属性の魔法だろうか・・・。


 後は死亡推定時刻だろう。しかし検死とか精密な知識は持ち合わせていないからなぁ。時刻さえ絞り込めれば犯人がわかるかもしれないが。



「死亡推定時刻がわかる、そんな魔法があるわけないよな・・・・」


 とりあえず聞いてみるしかないな。


 扉を開けると全員が神妙な表情でコッチを見ていた。


「すいません。マジックさん実は・・・・・」


 死亡推定時刻はわかるだろうか。


 「結論から言うとそんな妙な魔法は知らん。もしかしたらあるのかもしれないが探すのは至難じゃな」


 やっぱり無理か。


 「俺が見ますよ」


 「ウルフィーさんが?わかるんですか?」


 「うぉぉぉぉぉぉぉ」


 雄たけびと共に服が破れて上半身が狼化する。


 「今日は満月なんでね。じゃあいきますか」


 死体の側に近づいて臭いを嗅ぐ。


 まさかそんな動物みたいな方法でわかるのか!


 「わかりましたよ。死にたてでもないけど、そこまで時間が経っているわけでもなさそうなこの臭いの感じは・・・・」


 本当に大丈夫だろうか。


 「今から大体2時間前あたりですかね。女神アルテナに誓ってもいいです」


 アルテナは人狼族が信仰している女神だ。女神に誓うのならかなり本気と言うことだ。誓いを破れば加護失うと言われている。しかし・・・血の匂いでそこまでわかるのは種族の本能なのか経験からなのか・・・。考えたらちょっと怖いわ。


 「わかりました・・・信じます。2時間前なら22:20分。前後の誤差を考えるとちょうど余興の最中と言うことになりますね」


 「この時間帯にいなかった人が怪しくなってきますが・・・・・」


 「犯人なら明白じゃぞ!」


 とマジックさん。


 「なんですと?」


 犯人を知っているのか。なら捜査はもう必要ないけど・・・。会場にどよめきが起こる。


 「犯人はアイツに決まっておる!」


 ビシッと指す方向にいるのは扉から顔を出しているハーフエルフのノエルさんだった。

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