エピローグ
事件から2日後
― 灰色神殿エストール王国支部 ―
「裁定者リテーズ様の名において汝を三等捜査神官に命ずる」
スフィルネ司教から首飾りを受け取る。なんとか試練も成功し、晴れて三等神官になれた。これで堅苦しい神殿から出ることができる。
「なお今回はリテーズ様より魔法の授与が認められた。受け取るがいい」
「ありがたく頂きます」
赤い珠を受け取る。ラッキーだ。昇等試練成功時は魔法を大体は貰えるって聞いていたから。一部もらえない人もいるみたいだけど。
「では施してみよ」
貰える魔法は一般的な魔法とは異なり個性的なものになるらしい。神が捜査を見た結果で勝手に決める感じだ。
「はっ!」
珠を握りしめると魔法が体に浸透する。この魔法は・・・・・。
「では汝はローガーかディテクトかどちらを望む?」
簡単に言うとローガーは神殿支部に部屋を貰いそこを拠点に行動するスタイル。ディテクトは街を拠点に行動するスタイルだ。支給される月経費はどちらも同じだローガーは部屋代が無料だ。安価なアイテムも無料で支給される。神殿の援護も早くて手厚い。でも神殿に縛られるので自由な時間があまりない。デイテクトは指令があるまでは街で自分の裁量で自由に暮らせる。その代わり基本的に全て自分持ちだ。
「ディテクトを希望します」
神殿に縛られるのはごめんだ。
「わかった。これにて授与式を終わる。もう帰っていいぞ」
「はっ」
司教の部屋を後にした。
廊下をスキップで進んでいく。ようやく刑務所暮らしのような生活から解放されるのだ。任地が決まれば後は住処を自由に決められる。
「えらく上機嫌だな」
後ろから声がかかる。
「ええ、そりゃあもう。今日は何が起こっても許せる・・・・・ってええっ!」
長い黒髪にキリッと眼鏡、そこには魔女が立っていた。
「ルーティア先輩!どうしてこんなところに!」
ルーティア先輩はの狂気の魔女と呼ばれいてる才媛で2年前からの知り合いだ。1年前に三等神官になっている。ディテクトなのに特例で神殿にも部屋を与えられおり、今も怪しげな論文を書いたりしているみたいだ。実家もそこそこ有名な商家なのでお金不自由しないらしい。
「ふっふっふっ・・・あっはっはっはっはっはっ」
上機嫌で笑っているよ。
「ははっ・・・あいかわらずですね」
「久しぶりだなセカイ。聞いたぞ三等神官になったそうじゃないかおめでとう。渡したアレは役に立ったのか?」
自然に肩に腕を回してくる。
「お陰で様でバッチリ役に立ちました。偶然とはいえラッキーでしたよ」
「偶然ではないよ」
「えっ?」
どう言う意味だ?
「アレが必要になるとわかってたんだ」
しかし距離が近い。近すぎないか?
「なんでわかったんですか?」
いい匂いがする。やばいな思考が働かない。
「・・・・女の勘だよ」
そっと耳元で囁かれる。心臓がバクバク言っている。一体何がどうなっている。
「ふっふっ、本当はたまたまベッドの下に転がってたのを渡しただけさ。ちょっと汚れてたから」
肩から重力がなくなる。
「ふぅ」
一息つく。一体どこまで本気で言ってるんだか。
「そうだったんですか。まぁ役に立ったんで感謝してます」
最近ボディタッチが多くなってきたような気もするけど気のせいだろう。
「ところでセカイ。どんな魔法を貰ったんだい?」
先輩の猛禽の眼が怪しく光る。
「そっちが本命ですか。まぁ先輩には教えてもいいでしょう。前から欲しいと思っていた便利な魔法ですよ」
「ほぅ」
魔法・マジックアイテムは先輩の研究テーマの1つでもある。魔獣の栄養価の研究もしてたけど。
「それはですねぇ・・・・」
「検死の魔法ですよ」
「ケンシ?」
「そうです。この魔法で死体の死亡推定時刻と死因がわかるわけです」
これで火サスのように推理しやすくなる。そういえばウルフィーさんの嗅覚もかなりの精度があったけど狼化の魔法じゃなくて良かった。いちいち服が敗れるのは嫌だからな。
「えっ?それだけか?」
それだけって、この魔法はそれ以上に応用できないと思うけど?
「死亡推定時刻なら死体に鑑定の魔法をかければわかるぞ?さすがに死因まではわからないけど。一般には認知されていないが従者クラスの授業で習うはず」
知らなかった。召還されてすぐに無理やりスカウトされて中途編入みたいな形だったからな。
「まぁいいんじゃないか。君は初歩の魔法も使えないから、それにあの魔法は使えるわけだし、アレは良い魔法だ」
感慨深そうにしゃべる先輩。メモリーダグはそこそこレアな魔法らしい。
「じゃ用事があるからもう行くよ。どうせディテクトを選んだんだろ?また暇が出来たら遊びにいってやるから家が決まったら教えるように」
颯爽と歩いていく先輩。なんやかんやで面倒見のいい先輩だ。




