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屋敷の調査


 フゴー氏と別れると早速調査を始める。まずは情報の収集からだろう。


 「アリッサさん」


 「はい。神官様」


 アリッサさんは20代半ば頃のかわいいメイドさんだ。まだ少し表情が硬いような・・・。


 「この屋敷を案内して頂きたいのですが」


 「はっ、はい。わかりました」


 1Fは玄関に応接室がある、廊下を進むと右に大広間があり左に控え室がある。さらに進むと廊下の左側に台所・食堂が見える。廊下を突き当って右には寝室、左に曲がると行き止まりで休憩用のソファーが置かれている。1Fはざっくりこんなものか。


 大広間に入ると何やら色々準備されていた感じだ。今日は主人の誕生パ-ティを行う予定だったからその名残りだろう。奥に豪奢で頑丈そうな扉がある。ドアノブを回しても開かない。どうやら鍵がかかっているみたいだ。


 「この扉の奥はご主人様の書斎となっております」


 「中を覗いても構いませんか?」


 「仕方ありません。神官様の仰せであれば」


 アリッサさんが貰ってきた鍵で扉を開けて中を覗いてみるも特に変わったところはない、ごく普通の書斎。壁の通風口が少し気になったものその場を後にした。


 続いて2Fは客室になっていて10部屋ほどある。ここも特に変わった様子もない。一通り回れたので家の探索を終えた。


 「ではアリッサさん今日この屋敷にいる人は何人でしょうか」


 「はい。本日この館にいるのは私を含めると全部で13人です。まずご主人様と護衛で3人、知己の魔法使いの方が2人、芸人の方が3人、ご主人様の弟君が1人、私と屋敷の下男で2人、後は神官様です」


 「なるほど。しかし1人足りないような・・・」


 ちょうどそのとき1人の小柄な女の子とすれ違った。そのまま2Fへ上がっていく。


 「そうでした。今すれ違ったお客様がいらっしゃいました。神官様が来る1時間ぐらい前に来られたのですが、ご主人様の口ぞえで今日から滞在されることに・・・」


 「今の子がですか・・・。一体どういったご関係ですか?お孫さん?」


 「いえ、よく知りません。ご主人様に孫はいませんし。ただあの方はたぶんハーフエルフではないかと。少し耳が尖っていましたので」


 ハーフエルフとは珍しい。ならば子供に見えても実際は俺より年上かもしれないな。しかしフゴー氏はハーフエルフと面識があるのだろうか。顔は広そうだけど。


 「案内ありがとうございます。後は1人で見て回りますので」


 「いえ、何かあればいつでもお呼びください」


 こうして一旦別れた後、玄関先に一人佇む。


 「さて他の人にも会っておきたいけど。まずはこれか・・・」


 懐から取り出したのは水晶だった。上に掲げて呪文を唱えると水晶は輝き光が屋敷全体を覆った。これは結界で屋敷の内外の人の出入りを感知することができる。つまりこれで誰かが外から侵入したのか、外へ出て行ったのかがわかる。神官に支給される基本アイテムだった。


 「もう今日は客が来る予定がないらしいから反応することはないと思うけど」


 結界を張り終えると屋敷内を散策する。誰かいないだろうか。大広間の前の控え室を見てみると3人の人物がいた。


 一人は妖艶な女性で人形を操っている。獣の耳が出ているから人族でななさそうだ。


 「始めまして私は・・・」


 「聞いてますよ神官様。私は人形遣いのカミールと申します。以後お見知りおきを・・」


 また人形を動かし始める。糸は見えないが一体どうやって動かしているのだろうか。


 今度は右手の男に話しかける。肌の色と耳といいダークエルフのようだ。


 「私は・・・」


 「存じておりますよ神官様。私は奇術師のマリックと申します。これをどうぞ」


 トランプを一枚渡された。ハートのエース。


 「あの、これは・・・」


 パチンと指を鳴らしたとたんに持っていたトランプがジョーカーに変わっていた。目を離した一瞬で。これはトリックなのかそれとも魔法なのか・・・。


 最後に奥にいる男に話しかける。痩せこけてゴテゴテした装飾、まるでインドのコブラ遣いのような出で立ちだ。


 「私は灰色神殿から参りました神官です。どうぞよろしく」


 「・・・・・・・」


 視線すら合わせてくれない。


 「・・・ウロゴツム・・」


 自己紹介だったのか、どうやら魔獣使いのようで小さな手の平サイズの象を笛を吹いて操っている。まさかこんあに小さな象がいるなんて・・ここはやっぱり異世界だと痛感する。小さな象は笛に音が止まると箱の中へと帰って行った。


 なかなかクセの強そうなメンバーだ。とりあえず控え室を後にした。


 廊下を歩いていると、いかにも魔法使いといった緑色のローブを着た初老の男に出会った。歳は50歳ぐらいかな。


 「始めまして。私は・・・」


 「聞いている。わたしはマジック。この街で一番の魔法使いでフゴーの友達じゃよ」


 杖まで持ってどの程度の魔法を使えるのだろうか。


 「一応フゴーの援護をするために来とるつもりじゃからな。よろしく頼む」


 「よろしくお願いします。ちなみに得意な魔法はなんでしょうか?」


 「ふむファイヤーボールが一番得意じゃな。賊を火達磨にしてくれるわ」


 範囲魔法だし屋内での使用はコッチも危なそうなんだけど。


 「ははっ、期待しています」


 廊下を後にし、再び玄関へ戻るとフゴーさんがいた。


 「フゴーさん?」


 「フゴーじゃないよホゴーだよ!」


 「???ええっ」


 何なんだこのテンション・・・フゴーさんじゃないのかい!なんか踊っているし・・・。


 「あの私灰色神殿から参りました・・・」


 「ホゴーだよ」


 エアーで踊るホゴー氏。タンゴかな。


 「あのお話を・・・」


 「兄貴の誕生日会に来たんだよ」


 踊りながらフェードアウトしていった。一体なんなんだったんだろう・・・あの人は・・・。


 こうして玄関を後にした。


 食堂に行くと先客がいた。見た目は僧侶のエルフだが・・・。


 「私は灰色神殿から参りました者なんですけど・・」


 「お話は聞いていますよ。私はホイルと申します。白色神殿の者でして・・・この街の教会の司祭を務めております」


 見たときからそうじゃないかと思ったけど・・・やっぱりか。ってことは回復専門と見て間違いないだろう。屋敷の滞在者で一番まともそうな人だけど。


 「フゴー氏からの要請で来られたのですか?」


 「はい。フゴー氏からは多額の寄付を頂いてますし、これも仕事ですから」


 スポンサーの頼みは断りにくいからな。うちの神殿に関してはそんなこと気にしないだろうけど。


 「仕事ですから怪我人が出た場合は誰であれ速やかに治療いたします。悪しからず・・・」


 こちらの教義や事情も知っているのだろう。非情の集団ってわけでもないんだから・・・それでも構わないけど。


 「怪我したときはよろしくお願いします」


 食堂を後にした。


 次は2Fへ向かう。あのハーフエルフの子にも一度会って見たかった。確かこの部屋らしけど。


 コンコン!

 

 「もしもし・・・」

返事がない・・留守なのだろうか・・・寝ているのか?


 結局諦めて1Fに戻った。


 「アレあの人は・・・」


 野性味のある逞しい体つきの人がいる。


 「あのすいません・・・」


 「ああっ・・これは神官様。話には聞いていました。あっしは下男のウルフィと申します。御用の際は何なりと言いつけて下さい」


 「はい。そのときはよろしくお願いします」


 いい人そうでなによりだ。これで大体は自己紹介は出来たか。


 「神官様!ご主人様がお呼びです。大広間にお越しください」


 アリッサさんに呼ばれて大広間に向かった。



 

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