#8 菓子と改札機と帰宅
どうも。
大回り編、完結です。
一体、いつになったら、我は食物を摂取出来るのだろう。
しかし、ここには何も無いのだ。
前に進む道しか残されてはいないのだ。
前に進むしか無いのだ。
魔王はすでに、寄りかからずには立っていられぬ程に消耗していた。
「というか、我はそもそも何故こんな旅をさせられているのだろう、、、」
そんな事を考えようが、空腹は増すばかりだ。
もはや惰性で列車を乗り継ぎ、感覚のしっかりしないまま彼は行程を進めていった。
精も根も今に尽きようと言ったところで、運命も彼を哀れんだか、一筋の光が彼に差した。
とある乗換駅でのことだった。
「これは、、、菓子の売られている自販機だ!ああ、ようやく飯にありつける時が来た!」
彼はすぐさま飛び付き、適当な品を購入し、口に運んだ。
「なんて、、、なんて感動的な味なんだ、、、ただの焼き菓子をこれほどまで美味いと思ったことは
これまで魔王として暮らしてきた中で一度たりともなかった!」
すぐさま魔王たる活力を取り戻し、彼はまた旅を再開した。
「空腹で気づかなかったが、こうして平野を横切るうちに少しずつ僅かに風景も変わっていたのだな」
「そしてまた帰り行く間にも街並みは我が城下町のそれに似たものになってきた」
「大きく遠回りをするからこその景色の変化だな」
気がつけば、すでに日は沈み、街並みの灯りは夜を照らしていた。
「夜になり、また乗客が増えてきた。庶民の帰宅の時間なのだな」
「こうして見ていると、一日中客の量は変化し続けていたな。意外とおもしろいぞ、こうして見るのは」
そして彼は、最後の列車に乗車した。
「振り返ると、今回の旅も大変だったな。ことによると前回よりも大変だったやもしれん」
「乗り換えの短さや売店の無さは特に、苦しめさせられた」
「しかし、何だかんだで楽しかった。こんな旅は、前回と同じように初体験だったからな」
「要らん知識かもしれんが、知見が広がったような気がする」
そして、列車はとうとう降車駅にたどり着いた。
「さて、着いたな。これで終わりと思うと、やはり寂しくなる」
改札へ上がり、切符を取り出す。
「この切符にも一日中世話になったな。最安値の切符だというのに」
惜しみつつも、我が国で最近開発された自動改札機に切符を突っ込んだ、その時。
『ピンポーン』
「えっ?」
『カカリインノイルカイサツヘオマワリクダサイ』
弾かれた。
「何故だ、、、締まらない終わり方だな、、、」
仕方なく有人改札へ回り、無事に通してもらった。
「さて、もう面倒だ。『テレポート』」
そして彼は、二度目の旅から帰還した。
「あらあなた、お帰りなさい。どうだった?」
「とりあえず疲れた。ごはんたべてもうねる」
「あら、ほんとにお疲れのようね。夕御飯もお風呂も用意しておいたわよ」
「ありがとう。そしていただきます」
こうして、魔王の二度目の旅は終焉を告げた。
どうも。
そろそろネタが無い(早くね)
魔王くんに旅してほしい所があったらなろう内でもツイッター(@xoversoul)でもリクエストしてね。
なるべく書きます。書ければ書きます。