#7 近郊と罠と絶望
どうも。
今回も大回りは知っている前提で書きました。
知らない人はググってね。
、、、間に合った。
ふ、久々に生身で走ったな。
そうか、こうやってあらゆる事に全力を懸けることによってのみ、
大回りという超安価の旅は成り立つ、ということか。
面白いな。
これもまた、曲がりなりにも、素晴らしき’旅’の一つなんだな。
、、、彼は、また一つ、学んだ。
「さて、この列車の乗車は一時間ほどか。景色も段々と都会から離れていくようだ」
彼はもう慣れたようなしぐさで、車窓に目をやった。
「しかし、前に見たような田舎とは少し違うな。あくまで都市近郊ということか」
「普段生活の中にあるような都市近郊の路線でも、大回りにおいては旅の目的になりうるんだな」
実際彼が車内を見渡しても、観光客やその類の乗客は見当たらなかった。
「何でもないごく普通の町の風景のようなのに、大回りではまた違って見える気がする」
「不思議だな」
そんな事を思いながら、彼は乗換駅に到着した。
「さて、ここでは四十分ほど時間が取られている。昼飯を食え、ということだろうな。腹も減ったしな」
そうして彼は改札前まで一通り歩いて、あることに気がついてしまった。
「待てよ?ここまでに店が一つも無くなかったか?」
気がついた彼は、再びホームに戻ってみる。
「やはりか。カフェなんかは勿論、駅そばや駅弁屋も無く、売店すら改札の外にあるだけだ」
「なんということだ、、、これが大回りの罠だということか、、、」
彼は行程表を確認する。
「次の乗車も一時間半はある。それまで飯はお預けか、、、」
なんとか空腹を凌ごうと、自販機で飲み物を買ってみる。
「ごくごく、、、うーむ、やはりいまいち腹が満たされない。あと二時間はこのままか、、、」
大回りの洗礼を受けた魔王。
なんとか待ち時間を凌ぎ、次なる列車に乗車した。
「車窓がさっきと大して変わらん、、、この車窓と空腹で一時間半か、きついな」
襲いくる空腹。
「いまはどの辺りだ?、、、まだ十五分しか乗っていないのか、、、」
倍よりも長く、長く感じられる時間。
「こうなると分かってさえいれば飴でも持ってきたというのに、、、」
過去の自分の無知への後悔。
「腹もさっきからしきりに鳴っている。しかし何も食糧は無い、、、」
時間が経つにつれて、どんどんと増してくる空腹。
一時間半が経過し、乗換駅に到着する頃には、彼は限界に達していた。
「ああ、、、飯だ、、、我に飯を、、、」
そうして彼はよろよろと売店を探し歩く。
しかし、そこにあったのは残酷な事実のみであった。
「あれ、、、?ここにも、あそこにも、どこにも売店が無い、、、?」
「嘘だろう?まさか、、、そんな、、、嘘だと言ってくれよ、、、」
絶望。
そしてさらに襲いくる空腹。
また同じように、飲み物を購入。すぐさま飲み干す。
「ああ、、、我は、、、いつになったら飯にありつけるんだ、、、?」
どうも。
大回り、特に房総半島とか行くと、こんなことが起こるんですよね。
私もこのパターンで死にかけた経験があります。
辛かった。