#5 新幹線と茜空と旅の終わり
どうも。
今回で北国編は終わりです。
駅に急ぐ魔王。
なにせ、気づいたら列車の時間まで残り5分を切っていたのだ。
「駄目だ、歩いてたら間に合う気がせん。仕方ないな、、、」
そう言って彼は手のひらを前に突き出した。
「外ではあまり使いたくなかったが、、、”テレポート”」
そう言い終わる時には、そこは既に駅だった。
魔王ってすげえ。
「では列車に乗り込むとするか」
そう言って列車に乗り込もうとしたその時、彼はふととある気持ちを抱いた。
「、、、なんだか寂しいな、この村と別れるのは。此処でも色々な事があったからな、、、」
しかし、彼は旅人であった。前に進まねばならない。
「さらばだ、雪の村よ、、、」
そして彼は、村に別れを告げた。
「そう言えば、もうあと二本の列車で帰りつく予定だったな。ここまで早かったものだ」
彼は、美しい山並みに目を向けつつ、この旅を振り返る。
「はじめは、理由も知らされずに旅立ったのだったな。未だに理由は分からんが」
「そしてまずは寝台特急に乗車した。そこでは商人の紳士と出会ったな」
「そいつとの話は、他愛ない話ではあったが、何故か愉しかった」
「見知らぬ者と話ができるのも、寝台特急の魅力の一つかもな」
「そして今朝は、駅弁の素晴らしさを思い知らされた」
「あれは本当に旨かった」
「その次の駅では、心優しい駅員に出会った」
「田舎のひとというのは、皆温かいのだと知ったな」
「そして地方鉄道の魅力にも気づくことができた」
「あのような景色は、都会では見ることは叶わないだろう」
「さらに、村の駅では駅そばの旨さも知った」
「他の駅そばも食べてみたいと今では思っているほどだ」
「温泉では、勇者との出会いもあったな」
「今思えば、なんで温泉に勇者がいたんだろうな」
「まあ、いい湯であったし、勇者がわざわざ来るのも分かる」
「とまあ、こんな旅だったな。この旅で、様々なことを知った」
「良い、旅だった」
そして彼は、乗換駅に到着すると、下車して新幹線ホームを目指した。
「新幹線は地方訪問の行事などで度々利用している。馴染み深いな」
乗車し、着席した彼は、疲れからかすぐさま眠ってしまった。
目を覚ましたのは、都も近くなった夕方であった。
「夕暮れか。町が茜に染まっている。綺麗だ」
「旅の終わりとなると、この夕焼けも感動的だな」
とうとう列車は、終着駅に到着した。
「はあ、帰って来たな。さっさと城に戻るか」
「お帰りなさい、あなた。旅はどうだったの?」
「いろんな事があったよ。本当に」
「そう。楽しかった?」
「ああ。勿論だ」
「それなら良かった、次も用意してあるからね☆」
「えっ?」
魔王の旅は続く。
どうも。
旅は続く。