#4 温泉と牛乳と勇者
どうも。
温泉だけでまるまる一回使うとは思わなんだ。
閑散とした、いかにも古そうな町並みを歩く魔王。
目的地は、勿論。
温泉である。
「ここか、意外と遠くなかったな」
駅から歩いて数分、彼は温泉施設に到着した。
なにせ彼には時間が有り余っていた。
「入るか」
戸を開き、中へと入っていく。
前払いの料金を支払い、ロビーに進んだところで、彼は何気なく館内を見渡した。
そこで彼は、ある人物を見つけたのだった。
「まさかお前は」
「誰お前」
「そうか、顔だけもとに戻すか」
その人物こそ、
「久しぶりだな、勇者よ」
「お前、魔王か?」
勇者であった。
説明しよう。
この国では、魔王の一族と勇者の一族は協力関係にある。
かなり昔からそうなっている。
よって、魔王と勇者の二人もまた、学徒であった頃からの友人であり、好敵手でもあった。
「いやなんでお前こんなところにいるんだよ、しかも見た目も変えて」
「それはかくかくしかじかでな、、、、、」
「そっか。そうだ、せっかくだから俺が案内してやるよ。お前温泉とか分かんないだろ」
「本当か?ありがたいな、お願いするよ」
「ああ。じゃあ男湯へれっつごー」
そう言って、二人は暖簾をくぐった。
~脱衣中~
「、、、ここが大浴場か」
「よし、じゃあまずかけ湯だ。脚から心臓に向かって段々と湯を体にかける」
「ふむ。これで体を熱い湯に慣らすと言うことか。体の汚れも落ちる」
「鋭いな。まさにそう言うことだぜ」
それぞれかけ湯を済ませた二人は、湯船に浸かる。
「ふう、、、旅の疲れが癒されるな」
「独特の香りもまた良いだろ?」
「ああ。そうだな」
「最近はどんな調子だ?」
「上手くいってるよ。お前ら勇者のお陰だ」
「それほどでも」
「どうだかな」
「さて、露天風呂に移るとするか」
「そんなものもあるのか」
二人は戸を開け、露天風呂に浸かる。
「ふう、、、外もまた良いな」
「冬場はちょっち寒いけどな、代わりに景色は一番だ」
そう言いつつ目を景色へ向けると、雪に覆われた村がそこにはあった。
「もっともだな、湯に浸かりながら見ると景色も違って見える」
ゆっくりと過ぎる時間。
「そろそろ中に戻ろう。体も洗わなきゃいけないし」
そうして二人は大浴場に戻り、体を洗い、再び数分湯に浸かった。
そして二人は湯から上がったのだった。
~着衣中~
「はあ、いい湯だった」
「ああ。なかなかだったな」
そう言いながら冷蔵庫に向かう勇者。
「やっぱり風呂上がりは牛乳だよな。ほら」
「ありがとう。もらうよ」
『ごく、ごく、ごく』
「ぷはー!良いね!」
「ふう、良いな」
そしてくる別れのとき。
「じゃあな、次会うのは、、、上半期末会議かな?」
「ああ。それまで達者でな」
「おう。あばよ」
「さらば」
どうも。
この旅も次回で終わりかな?