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魔王旅~我、旅したり~  作者: 初雁
2/8

#2 銀世界と駅弁と駅員

どうも。

今回はほぼグルメ回です。

上手く旨そうに書けたかは別として。

目が覚めた。

魔王は気が付かない。

そこが既に、北国であることに。

「ああ、、、もう朝か。それにしてもかなり寒いうえにトンネルの中らしいな」

段々と車窓のその先に光が差していく。

トンネルを抜けると、そこには一面の銀世界が広がっていた。

「おお、、、!美しいな。そういえば雪など久しく目にしていなかった。たまには良いものだ」

彼は、暫く車窓に見とれつつ、ぼんやりした意識の醒めるのを待った。


向かいの席を見ると、昨晩の紳士はもう途中駅で下車したらしく、姿は見えなかった。

「名も尋ねぬままだったな。だがもとより一人旅だからな」

そして彼はおもむろに袋を取り出す。昨日購入した駅弁だ。

「幕の内、とか言ってたな。どの様なものか、食してみるとするか」

紐を取り、包み紙を剥がし、蓋をあける。

すると、魔王には縁の無い、ごくありふれた幕の内弁当が姿を現した。

「ほう、幾つかのおかずと胡麻のかかった白米、そしてその上には梅干しか。まあ御託はいい。」

彼はまず、一番に目を引いた焼き鮭に箸を伸ばす。

「おお、旨いな。脂の乗った鮭だ。塩加減も程よく、白米にもよく合う」

鮭とともに白米も一口。そして次はだし巻き玉子に箸が行く。

「時間が経っているのに柔らかい。だしの旨味と、ほんのりと漂う甘味もある」

ふと、脇にある昆布の佃煮に気付いた。少しつまんで、口に運ぶ。

「、、、、、! これは旨い!磯の香り、固すぎず柔らかすぎない食感、どれをとっても素晴らしい」

そして止まらない白米。

「良いな、良いぞ幕の内弁当」

すっかり彼は駅弁の虜になり、気付けば完食していた。


とうとう列車は終着駅へと辿り着いた。

彼は下車し、次の列車に向かう。

「外は一段と寒いな。もっと着込んで来れば良かったか」

閑散としたホームを歩いていく。

次の瞬間、まさに次の列車を目にした瞬間、彼は驚愕した。

「この列車、、、一両しかないではないか!?有り得ん!」

驚き、彼は車内を覗き見た。

もう一度、驚愕した。

「誰も居ないぞ!?本当にこれは次の列車なのか?」

「ええ、間違いなく先発はこの列車ですよ」

優しげな声で話しかけた中年の男。

「本当か?」

「勿論です。私はここの駅員ですから、何十年もこの列車を見届けてますよ」

この言葉に安心し、魔王は礼を告げた。

「ありがとう」

「いえ、それほどの事では」

振り向き、乗車しようとしたその時。

「あと」

「この列車は右側が良いですよ、景色が綺麗ですから」

少し立ち止まり、言葉を聞き届けると、魔王はまた、歩き出した。

(そうか、田舎には温かい、良い人がたくさんいるとよく言うが)

(昨日の紳士にしても)

(こういうことだったのか)

駅弁を知り、人の温かさに触れ、彼はまたひとつ、旅の素晴らしさを知ったのだった。


次回の魔王旅は

魔王、ローカル線を味わう

魔王、駅そばを味わう

魔王、温泉を味わう

の三本です!

じゃんけん、✋!

うふふふふふ!

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