#1 無茶ぶりと旅立ちと寝台特急
ハジメマシテ、ハツカリ=デス。
このお話は魔王が取り敢えず旅をさせられる話です。
僕が鉄オタなので、作中の旅も鉄分多めになると思われます。
多少のガバはゆるしてね!
「旅に出るのよ、あなた」
「えっ?」
長身の男は、妻から発せられた言葉に驚きを隠せない。
彼は魔王だ。今は極東の名前もない帝国を治めている。
一応国は他国に誇れる程には大きいし、父から国を引き継いでからは民からも慕われている。優しい。
だが妻には弱かった。
「だから、旅に行ってらっしゃい、旅。」
「何故だ?理由もなく旅に出ろと言うのか?しかも口振り的に一人か?」
「とにかく旅に出るのよ、良 い わ よ ね ?」
「アッハイ」
かくして、彼は北へと旅立った。一人で。
「一応行程表は貰ったが、、、なんだこれ?出発が真夜中になってるぞ?実際今は21時近いが」
彼は妻に貰ったチケットにも目をやる。
『寝台特急ラーバダ1号 10:32発』
ラーバダは彼の名である。慕われている証だ。
「寝台特急、、、乗ったことないが、庶民の遠距離移動手段と聞く。我がこんなのに乗るとはな」
実際彼は生まれつき魔王の家系であり、寝台特急などには縁はなかった。
「どうやら飯も付いていないらしい。調達したら乗り込むか」
今さらだが、彼は妻の魔術により見た目は完全に庶民に偽装されている。便利。
そして彼は駅弁屋に歩み寄る。
「駅弁か。確かに耳にしたことはあるな、人気らしいがどうなんだろうか?」
「ラッシャッセー!」
「何にしようか」
「幕の内がオススメです!」
「じゃあそいつを頂こうか」
「ありがとうございました!」
こうして食糧を調達した彼は、とうとう旅の第一歩を踏み出す、、、!
「晩飯は食べてきて良かった。無ければ此処で二食も食うはめになってたな」
そう呟きながら、彼は列車に乗り込む。
そして彼は気付いてしまった。
「チケットで薄々勘づいてたが、、、これはB寝台と言うやつじゃあなかろうか」
そう。何の思惑か、彼のチケットは魔王には似合わぬ最低クラスの席、B寝台のチケットであった。
「此処で一晩を過ごすと言うのか、、、庶民のことは解らんな」
「あのー、この席の方でしょうか?」
彼の動揺を遮るように、向かいの席の恰幅の良い男は話しかけた。
「、、、そうだが」
「良ければ寝るまで話をしませんか?もうすぐ出発ですから、もうここの乗客は来ないと思いますし」
「良いだろう、我も貴方の話を聞いてみたい」
そう言うやいなや、列車は動き出した。
「何処からいらしたんですか?私はこの列車の行き先の方に家があるんですが」
「そうだな、、、我はさっきの始発駅が地元だ」
他愛ない会話。しかし魔王には十分新鮮な会話であった。
「今は旅の途中だ。この列車から乗り継いで、北の方へ行くつもりだ」
「そうなんですね。私は仕事で、今帰りなんです」
「大変だな。商人か何かなのか?」
「よくお分かりで。今は果物の卸をしています」
「成る程。何の果物を?」
「林檎ですよ。地元の名産品です。貴方は何をなさっているんですか?」
「、、、戦士、といった所か」
「道理で、逞しい体つきな訳ですね」
「ははは」
「ふふ」
「もうこんな時間ですね。もうそろそろ寝ましょうか」
時計は0時を示そうと言うところだった。
「ああ。愉しかったぞ、話」
「ええ、私もですよ。御休みなさい」
返事もしないまま、魔王は布団に潜り込んだ。既に環境には慣れてしまっていた。
(意外と良いかもな、寝台特急と言うのも)
そして、魔王の愉快な一日は終わりを告げた。
第一話、いかがでしたか?
まあ一話はほぼノリで構成されてますから、色々突っ込みどころはあるとおもいますが、、、
構成とかはガバなんで、続編もガバはゆるしてね!