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日常はたそがれて  作者: 小五郎
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実家に着き「ただいま」と鍵を開ける。

当たり前のことだけれど、返事はない。


実家に住んでいた時は「お帰り」と、一人暮らしを始めてからは「いらっしゃい」と、母はいつも私を迎えてくれた。


集中治療室で、たくさんの管につながれた母を見たせいだろうか、実家で母の声が聞こえないことがとても寂しい。


時計の針は午前6時を指している。

父が身体のことを心配して、いったん休むようにうながしてくれたので、入院に必要なものもあるけれど、少し休むことにした。


自室に戻ると、そこは私が出で行った時のままになっている。一年以上帰っていなかったのに、ホコリが溜まっていないのは、母が時々掃除をしてくれていたからだと思う。


ベッドカバーを外して、横になる。

ぐるっと回りを見渡すと、色んな私がここにいた。


小学校に入学する時に買った学習机。母は口癖のように高かったと言っていたけれど、そこに「高かったけれど買うことができた」という満足感みたいなものを感じて、その口癖が嬉しかった。


本棚の下の方には、幼い頃、母が読み聞かせてくれた寓話が並んでいる。その本棚の一番上にあるのは、オモチャ屋さんで私が駄々をこねても、絶対に買ってくれなかったクマの縫いぐるみ。その年のクリスマスに私の所にきた。


そんな事を思い出していると、なんだか涙が出てきて、あんなに不満ばかりに感じていたのに、甘えたかっただけなんだって思った。


お母さんが元気になるまで、私ががんばらないと。


少し休もう。


目覚ましをかけて、横になった。

色々気になることはあるけれど、とりあえず目を閉じることにした。

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