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程なくして玄関前に安斉は上がって来た。玄関を開ける香織。安斉社長は香織を見るなり言った。
「久しぶりだな香織、いいか気をしっかり持って聞けよ。今日起きたトンネル崩落事故は知ってるか? 」
「はい、ワイドショーで見ました」胸騒ぎがする、激しく。
「じゃあ分かるな、諸岡と剛が巻き込まれた可能性がある」
「! 」
間髪入れず安斉社長は続けた。
「今はまだ可能性があるだけだ、俺が今から現地へ行って直接確かめてくる。テレビなんて無責任に報道するから、信じるな、見なくていい。俺が電話で伝える事が真実だ。いいな」
無言で頷く香織、胸騒ぎが激しい。
「それと松永由紀は知ってるな」
「剛のアシスタントをしてくれている松永由紀さんですか? 」
「そうだ」
「勿論、私の仕事も手伝ってくれていましたから」
「こういう時は独りでいるとロクでもない事しか考えん。丁度いいからここで休ませてやってくれ、このまま独り住いのアパートに帰すのも酷だ」
香織は安斉社長の後ろを見ると俯いている由紀を見つけた。
「由紀ちゃんこっちおいで、一緒にいよう」
由紀は小さく頷くと顔を上げて香織を見つめた。青ざめた表情は暗く、目にいっぱいの涙を溜めていた。
由紀は香織に力無く寄り添うと、香織はそんな由紀を抱きしめた。




