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トンネルの中の剛は目を覚ました。
か弱いルームライトが照らすレンタカーの助手席で──なんだろうこの電車の夢は? 余りにも生々しく現実感のある夢だ。通常の夢とは何かが違う。
と、何処からともなくか細い声が聞こえてきた。
「エッ…エッ…」
耳を疑った。誰かの泣き声だ。誰かが生きている。この絶望的とも思える閉鎖された空間で生きている。それも子どもだ。
「エッ…エッ…」
途切れ途切れだが小さく聞こえている。近くだ、近くに誰かがいる。
「どうした、大丈夫かい、誰かいるのかい」ありったけの声をあげた。
「頑張れ、一緒に頑張ろう、きっと助けにきてくれる。諦めないで! 」
剛は身動き出来ない、それに埋め尽くされた岩とコンクリート、自分ではどうしようもならない状況である。励ます事しかできなかった。




