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誰もが梨花子先生を見つめ涙を流した。あちこちから「ありがとうございました」の声が聞こえてきた。梨花子先生は顔をくしゃくしゃにして動けなかった。
──生きる喜びを心から実感していた。
と、剛の意識は教室を離れ、廊下を抜けて、玄関に向かい、校門から出てくると、電車の中に戻っていった。座席の剛は目を開けたまま放心状態だったが、意識が戻ると正気になった。
時計塔の長針が分で言えば五十九分のところから一つ進んで、カチリ、零時で止まった。
「出発進行」運転席から声が響くと、電車はゆっくりとレールの上を走り出す。
校門と裏山が少しずつ離れていく。それとともに眠ってしまった。




