7-2
人だかりは何重にもなって遊歩道を埋め尽くし、左右の緑地帯にまではみ出していた。
それを見た後藤は怖くなった。純恋を殺したのはお前だ! ここにいる全員にそう吐き捨てられるように言われている気がして怖くなった。
昨晩の道路に叩きつけられた純恋の姿が脳裏に蘇ってくる。
動けない、悲しみが身体中にまとわりつき動けない。震える、身体中が震える。純恋が可哀想、純恋が愛おしい。
純恋、もう一度君の笑顔が見たい。
この時後藤はマネージャーとして純恋の担当だっただけでなく、別の感情が自分の中にあった事に気がついた──純恋を愛していたんだ。
報道陣のカメラマンは小さな脚立に登り三脚を目一杯高く上げてその模様をビデオカメラで撮影していた。その中の一人がファインダーから目を離して何気なく後藤の方を見た。目と目があった瞬間、「見つけた! お前を見つけた」地獄の使者がそう言っているように感じた。
後藤は振り返って走り出した。
どこをどう走っているか自分でも分からないほど錯乱して無我夢中で走った。
「ああああああ」声にならない声をあげながら歌舞伎町に入ると、路地から路地へと滅多やたらに走り抜けたのだ。途中何人もと体がぶつかった。中には罵声を浴びせる者もいた。でも構わず走った。
自分を襲ってくる現実から逃れるように夢中で走った。




