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家に帰った純恋は、お気に入りのソファで横になったまま酒の勢いで寝入った。着替えすらしていない。
そして今日、起きた時は午後一時を過ぎていた。酷い二日酔いだった。頭の中がガンガン痛み、喉が乾く。起きた途端にトイレに駈込み嘔吐した。便器にもたれながらとにかく寂しかった。誰かに抱きしめて貰いたかった。全てが情けなかった。トイレから戻るとキッチンで水を飲む。胸焼けで水が思うように吸収できない感じがした。
たどたどしい足取りでソファに戻ると深々と腰をもたげ、ガラステーブルの上に置いてある携帯電話のリダイヤルを押した。何度かの呼び出し音の後アナウンスが流れる。
『おかけになりました電話番号は、電波の届かない場所にあるか電源が入ってないためかかりません…』一昨日から何度かけても同じだ。
それもそのはず──あの男の所属事務所にも二日前に同じ週刊誌が届いていた。そしてマネージャーから連絡があると、即行動に移した。まず、薬の売買の連絡と付き合っている女専用にしていた携帯電話を海に投げ捨てた。純恋を通じて色んな事が明るみに出る前に捨てたのだ。その携帯電話は裏社会で金で手に入れた持ち主が特定されない電話だ。恐らくどこかのホームレスに金を渡して作らせたものだろう。こういった細かい事に鼻がきくからこそ、俳優として活躍しながら、足が着かないように好き放題してきた。
そして男はもう日本にはいなかった。家族のいる海外へと帰っていた。国民的アイドルと不倫していたのだから、大騒動になる事は分かりきっていた。ほとぼりが冷めるまで日本には戻らないつもりでいた。海外の自宅はマネージャーにすら住所を教えていない。全てが計算ずくの本当のワルだ。