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その頃結城純恋のマネージャー・後藤は新宿の街をうろついていた。
自殺した結城純恋の遺体は死後すぐに検査され、体内から覚醒剤反応が出た事もあり警察が協力を求めた。勿論後藤は覚醒剤に関しては何も知らなかった。何も答えられなかった。ただ、自殺の原因となったかもしれない、週刊誌の記事に関しては警察に事情を伝えた。そして玄関に集まっている報道陣に気がつかれないように、秘密裏に警察署から解放された。
その後、事務所に連絡する気さえ起きず、携帯電話の電源を切って抜け殻のように街をうろついていたのだ。
後藤の頭の中には常に結城純恋の事が浮かんでいた。後藤は自分を責めていた、純恋の事を全く理解していなかった自分を責めていた。もし、少しでも純恋の悩みを聞いていれば自殺など防げたかもしれない、仕事、仕事一辺倒で純恋を国民的なアイドルとして作り上げる事には成功したが果たして純恋にとって本当の意味で味方になってやれていたのだろうか? 単なる金儲けの道具としてしか扱っていなかったんじゃなかろうか?
答えの出ない疑問で自問自答し自分を責めるしかなかった。
いつしか、ビルとビルの間に作られた緑地帯の遊歩道に出た。
そこでは若い男女に幼稚園くらいの小さな子どもと付き添いのお母さんやおばあちゃんまで、多くの人々が立ち止まって涙を流している。人だかりの隙間から見える立ち入り禁止の黄色いテープ。左右を立哨している警察官。数多くの報道陣。
遊歩道の生垣は即席の献花台となり山のように花束が添えられている。
後藤はそれを見て正気に戻った。間違いないここは純恋のマンションの下だ。純恋が命を落としたその場所だ。




