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先生は剛にターゲットをあてた。宏と純也はいつの間にか何処かに隠れている。
「やべぇ純也と宏どこいった」
ジリジリと剛を教室の隅に追い詰める梨花子先生。
「剛、いつになったら真面目になるんだ」
「うん、明日から」
「こらぁ」
──そこで終業のチャイムがなった。
「へへへ、先生終わりだよ、教室に戻って帰りの会やらなきゃ」
「もう」
梨花子先生はいつも一生懸命明るく子どもたちに接してくれていた。それに美しくスポーティで学校中の誰からも愛されていた。それだけでなく人懐っこい性格で町中の誰からも愛されていた。
音楽室のシーンを俯瞰で見ながら剛の意識は梨花子先生に思いを馳せた。
梨花子先生は三年一組のクラス担任でもあった。
すると剛の意識は音楽室から教室へと移動した。
教室には梨花子先生をはじめクラスメート全員が揃っていて帰りの会が始まった。
帰りの会では、みんなの得意なものを何でもいいから発表するコーナーがつくられていた。梨花子先生が子どもたちの主体性を養う為に提案した。手作りリリアンやら、書道に絵画、折り紙なんかが持ち込まれ、苦労した点やいところを日替わりで全員が発表した。
剛と宏と純也は学校の裏山にある渓流で釣ったヤマメの魚拓を競うようにして発表した。この頃三人は毎日のように渓流釣りをしていた。
──剛は少しづつ忘れかけた少年時代を思い起こしている。




