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剛は再び夢の中にいた。
三両編成の電車は山の中を抜けて両側が畑に囲まれた線路を走っている。先程と同じ座席で眠っていたがゆっくりまぶたを開けた。一両目の車内には剛と運転手の他には誰もいない。
開け放している車窓を見る。
畑から田舎道の側を通り、街中へと近づく電車。
次第に古めかしい校舎に、大きめのグランドが備わった小学校が見えてきた。すぐに裏には小高い山。線路は小学校の校門の前を横切るように続いている。電車は校門の近くまで来ると速度を落として停まった。
何処かで見た事がある──。
白土の校庭にあるボロボロのサッカーゴール、錆だらけの登り棒に高さ違いの四つの鉄棒。焦げ茶色をした二階建ての木造校舎。校舎の真ん中にある時計塔。間違いない、剛たちが卒業してすぐ廃校になった小学校だ。
全校児童数四十九人、剛のクラスメートは八人と少人数の小学校だったため、近隣の学校と統廃合されたのだ。
ただその頃と違う点が一つだけあった。時計塔の白く丸い文字盤には零時、三時、六時、九時のところに短い線が書いてあり、短針も秒針もない。あるのは長針だけだ。
零時で止まっていた長針は電車が停車すると同時に、カチリ──音を立てて動き出した。
校門を見ていると何処からともなく『故郷』の合唱が聞こえてきた。すると剛の意識は身体から抜け、小学校の玄関へと吸い込まれていった。そして合唱の聞こえる音楽室へと誘われた。




