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司会者は映像を見ながら、トンネル工事の専門家、大学教授の岩城に話しを聞いた。
「岩城さんこのトンネル崩落は、直前に起きた地震の影響ですか? 」
「はい、十分に考えられると思います。昭和初期に造られたトンネルという事で、それから改築も補強もされずにいるトンネルです。私も近隣住民の要請で何度か調査に訪れた事がありますが、かなり老朽化が進み崩落の危険があるトンネルとして、国土交通省に連絡をしています。でも近くにバイパスを造る計画が浮上して、改修計画が頓挫しているんですね。そういう側面からみると起こるべくして起こった、いわば、人災ともいえる崩落事故ではないでしょうか、地盤が緩い事と老朽化している事がわかっていながら、行政に関わる人間が放っておいたのです。付近の住民が幾度となく出した改修の嘆願書を近代化を名目に無視し続けたんです。いや、被害者の方々の心中をお察しいたします」
「ここで、現地の対策本部と中継が繋がったようです。対策本部の魚水さん」
場面が事故現場付近の役場に儲けられた事故対策本部の入り口に切り替わる。
報道のスタッフや行政、警察、消防の関係者でごった返していた。
「はい、魚水です。先ほどから警察、消防、行政の関係者が集まり今後の救助活動を検討している最中です。そして、先ほど発表がありましたが、知事が自衛隊に災害派遣の要請をしました」
香織はテレビを消した──不安感が身体中にまとわりついていた。




