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香織は自宅マンションのリビングにあるソファに横になっていた。
娘の佳奈はソファの横に置かれた揺りかごで眠っている。マンションは東京都世田谷区にあり、剛の通勤を考えての選択だった。
香織はゆっくりと目を覚ました──不思議な感覚だった。
佳奈に授乳して揺りかごに寝かせた後、剛に誘われるように感じ目を閉じたのだ。そして気がつくと剛の前に座っていた。そして、剛と全く同じ夢を見た。
香織はテーブルの上にあった携帯電話をかけてみた。
『おかけになった電話番号は電源が入っていないか、電波の届かない場所にあるためかかりません』アナウンスが流れた。
電話を切る。
そして、テレビのリモコンを手に取るとスイッチを入れた。テレビでは十時に始まったワイドショーがトンネル崩落事故を中継していた。
ヘリコプターが現場上空から撮影した映像が流れた。山肌はえぐり取られたかのように窪み、トンネルの出入り口は土で黒く詰まっている。道路には地下水が湧き出て濡れていた。
レポーターの高見がヘリコプターの中から中継している。
「今トンネル崩落現場上空から中継しています。ご覧頂いてますようにいくつかの小高い山の麓を一号から六号まで六つのトンネルが掘られており、その中の四号トンネルで今朝八時五十分頃崩落が起こりました。警察に連絡した大型トラックのドライバーによりますと、少なくても幼稚園バスと乗用車の二台が巻き込まれている模様です」
ワイドショーのスタジオでは映像を見ていた司会者が番組を進行する。
「高見さん、救助は進んでいるのでしょうか? 」
「上空から見えるのは通報した大型トラックが停まっているのと、警察と消防の車両が数台、反対側の出口付近には崩落を逃れたと思われるオープンカーとパトカー一台と救急車が一台です。まだ、トンネル内の救助作業は始まっていません」
──香織に不安が襲う。
「山肌の崩れ方を見ても分かるようにここら辺の地盤が緩く、地下水が湧き出しているため救助作業は難航しそうです」
「ありがとうございます高見さんまた後ほど繋ぎます」




