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剛は段々と何が起こったか思い出してきた。
そうだ、諸岡さん!
運転席に首を回すと、そこには車体を押し潰すようになだれ込んだコンクリートブロックの瓦礫が積み重なっていた。その隙間から一筋の光線が差し込んでいた。
「諸岡さん、諸岡さん! 」大声で何度も叫ぶが応答がない。
瓦礫の隙間に辛うじて手が入るところを見つけると手を突っ込んでみた。すると生暖かい何かが手に触れた。
「諸岡さん」
揺すってみるが動かないそのかわり何やらヌルッとした感触がした。手を隙間から引っこぬく。抜いた手をルームランプの明かりで見る。
鮮血が手を覆っていた。
「あああ…」手を振りながらパニックになる。
息を吸う、大きく息を吸う、吸う、吸う、空気を吸う、吐き方が分からない。苦しい、苦しい、呼吸の仕方が分からない、苦しい、息が・で・き・な・い──過呼吸のすえに剛は気絶した。




