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「どうしてそんなに真剣なの? 」
「…」
「じゃあ香織の初恋聞かせてくれたら言う」
香織は言葉に詰まった。
「ねえ、誰? 」意地悪そうに剛は聞いた。
「私の事なんて今はいいのよ、早く言いなさい! 」大声は電車中に響いた。
呆気に取られる剛。
「は、はい」
ガタンゴトン、ガタンゴトン──電車は進む。
剛は少し照れながら応えた。
「うーん、実は、麦わら帽子を被ってて、綺麗な黒髪が見えてて、小三の俺より少し背が高くて、袖無しの白いワンピースを着て、素足に赤いコンバースを履いていた女の子かな…名前が分からないけどずっと心に残っている思いがあるんだ。どこかで会ってる筈なんだけど、どこで会ったのか全く思い出せない」
「! 」
「どうしたんだい? 」そういった途端、剛を睡魔が襲いうつらうつら眠ってしまった。




