表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜ生きるか? それが知りたい!  作者: 赤木 爽人
第3章 「交差」 『繋がる宿命の糸』
67/151

3-1


 ──それは奇跡だった。


 完全にトンネルが崩落し、レンタカーもライオンバスも潰れた。だが剛は潰れなかった。剛が乗っていた助手席は大きな岩に囲まれ小さな空間ができていた。足は潰れたダッシュボードと座席に挟まれて動かない。しかし、上半身は辛うじて動かせられる空間があったのだ。更に運転席を埋め尽くすコンクリートブロックの瓦礫の隙間からは、一筋の光線が注ぎそれとともに新鮮な空気が入ってきていた。


 剛は気絶して──夢を見ていた。


 故郷北海道らしき山の中を三両編成の電車が走っている。単線でレールは一組しかひかれていない。

 天気は快晴、雲一つない。山の木々は濃く、生命力豊かにうっそうとしている。

 電車は幾つものコーナーを抜け、山を一つ抜けると大河の上に掛けられた真っ赤な鉄橋に差し掛かった。剛は一両目の中程の座席で、窓際に肘を持たれて眠っていた。

 車内には対面四人掛けのボックス席しかなく、木枠に青い布貼りの固めの座席だ。床も濃い茶色をしたフローリング。窓の上に備えられた吊棚はロープで編んであり、天井についている照明は丸く白いガラスでカバーされているものだ。

 車両の連結部は黒い蛇腹で囲まれていて、一両目と二両目の間には引き戸がつけられているが、窓はすりガラスでお互いの車両が見えない。どことなく懐かしさが漂う昭和初期に走っていた車両に良く似ている。

 一両目には剛の他には仕切りの向こうにある運転席に運転手が乗っていたが、仕切りに着いている小さなガラス窓からは、後ろ姿しか見えない。他の座席は空席だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ