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そして九時半頃、安斉社長が由紀を探して打ち合わせコーナーに来た。
「由紀ここにいたか」
驚いて目を開ける由紀。
「しゃ、社長、おはようございます」
「諸岡と剛から連絡はなかったか? 」
「三清山賀製薬に行ってますが…」
「連絡は? 」
「ありません、二人がどうかしましたか? 」
「いいか由紀、気をしっかり持って聞けよ」
「──」
「今さっき三清山賀製薬の担当者から連絡が入った。諸岡と剛が地震で起きたトンネル崩落に巻き込まれた可能性が高い」
「…」由紀はあまりもの事に全く理解が出来なかった。崩落、トンネル崩落、剛、諸岡…。
「崩落ってなんですか? 」きょとんとして聞き返す。
「三清山賀製薬の近くのトンネルが潰れて、その中に諸岡と剛が閉じ込められているらしい。ワシも二人の携帯に電話を掛けたが電波は届かないとアナウンスがあった」
「そうですか──え、え、諸岡と剛が…トンネルに閉じ込められて…」言葉を理解するにつれ頭が真っ白になっていく松永由紀。
「諸岡と剛がトンネル崩落に巻き込まれた…」うわ言のようにつぶやくと意識が飛んで気を失った。
「由紀、大丈夫か、しっかりしろ由紀」




