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反対側の出口では大型トラックが路肩で停まっていた。
異変に気がついたドライバーは、運転席から降りて変わり果てたトンネルの姿を見ていた。そして携帯電話を取り出し警察に電話をかけ、何台かトンネル崩落に巻き込まれた可能性がある事を伝えた。
その後三清山賀製薬に電話をかけて事情を説明した。
三清山賀製薬ではドライバーの連絡を受けて、ただちに各部署の責任者に来社の予定がないか緊急社内メールが回された。この近辺には動物園と三清山賀製薬本社くらいしか目立った施設がないので当然の成り行きだった。
それが、広報部長の目にとまった。諸岡からの連絡を受けていたのもこの部長だ。
時刻も既に始業時間の九時を回っている。
広告代理店『爽』の人間が打ち合わせに遅れた事など今まで一度もない、それに何の連絡もよこさないとはおかしい──部長は確信した。巻き込まれたのは諸岡と永澤に違いない。
広報部長は諸岡に電話をかけた──通じない、何度かけても電波が届かなかった。




