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三清山賀製薬へ向かう大型トラックは四号トンネルの中を走っていた。四号トンネルの全長は直線で三百メートル程。ヘッドライトを点けていると雨のような水滴が光って見える。いつもより確実に天井からの水滴が多い。ドライバーは違和感を感じながらワイパーを動かした。
反対車線では幌を全開にしたマツダロードスターに乗った若い男女のカップルがトンネルに入ろうとしていた。マツダロードスターはスポーツタイプの国産オープンカーで運転しているのは男性だ。
大型トラックに続くようにトンネルに入ってきた諸岡は、遠くにトラックの影が見えていた。
トンネルは確かにいつもと違った、地震によって元々緩かった地盤が動き、天井を支える老朽化したコンクリートブロックにヒビが入っていた。そして大型トラックが出口に差し掛かると同時に、ロードスターがトンネルに進入した。
その瞬間死のトンネルは牙を剥いた。
出口付近のコンクリートブロックの亀裂が拡大し、地盤の重みに耐えきれず崩れ落ちた。大型トラックは間一髪でトンネルから抜け出たが、諸岡は何が起きたかわからなかった。それもその筈、トラックが抜け出た半円形の光の中にコンクリートの瓦礫が雨のように降っている。そして──
ゴゴーン!
地面に落ちたコンクリートの瓦礫がうず高く積まさると、その上に支えを失った岩が土砂を伴っていくつも落ちてきた。そして出口が完全に塞がった。諸岡の視界が真っ暗になる。
しかしさすがにスーツを着たサムライ、身体が反応した。諸岡はブレーキを踏む──が、スピードがのっていたレンタカーは直ぐには止まれない。今度は咄嗟にハンドルを左に切ってサイドブレーキを引いた。と、車体は横滑りして積み重なった瓦礫に運転席側からぶつかった。
ガッシャーン!
車内のエアバックが作動する。それと同時にレンタカーは停まった。




