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なぜ生きるか? それが知りたい!  作者: 赤木 爽人
第2章 「進藤 達也」(シンドウ タツヤ) 『命の連鎖は途切れない』
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 その頃、かわぞえひかり幼稚園「コアラ組」もまた地震の影響でざわついていた。

 進藤里奈がいるクラスだ。

 通園時間の途中だったので、里奈のようにすみれ組に兄姉がいる子どもか、早めにきた数人しか教室にはいなかったがみんなテーブルの下に避難していた。


「もう大丈夫、みんな出ておいで」担任のひろこ先生がそういうと、歓声とともに出てきてひろこ先生を取り巻いた。さほど怖がってる様子もなくひろこ先生は安心した。でも、里奈が出て来ない。テーブルの下でうずくまって全く動かないのだ。

 心配になったひろこ先生は里奈のそばに行くと話しかけた。

「もう大丈夫だよ里奈ちゃん。地震は逃げてっちゃたよ」そして屈んでテーブルの下を覗き込むと、両手を広げた。

「おいで里奈ちゃん、先生が抱き締めてあげる」

 里奈は先生をチラリと見た。両目から次から次へと流れる涙。

「先生のところにおいで」

 里奈はテーブルの下から抜け出すと先生の懐に飛び込んだ。ひろこ先生は里奈を抱き締め立ち上がると、お尻をポンポン優しく叩いた。

「もう大丈夫、大丈夫」

「ジシンハコワクナイ」泣きながら震える小さな声で言った。

「凄いね里奈ちゃん、凄い凄い」

 ひろこ先生は小さな体を愛おしそうに抱き締めると頭を撫でた。

「…カエッテコナイ」

「誰が? 」

「オニイチャン」里奈はたどたどしくそう言うと先生にしがみついた。

 そして今度は大声を上げて泣き始めた。

「大丈夫大丈夫だって、地震じゃライオンバスは壊れないよう」

 里奈は全く聞き入れない。ひろこ先生の洋服に染みができるくらいひとしきり泣いた──困惑するひろこ先生。里奈は一人、何か特別なものを感じているらしかった。

 ひろこ先生は何も言わず、赤ちゃんにそうするように、ゆっくり揺らしながら外を見つめた。

 ──里奈はそのうち疲れて眠った。

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