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その時、一人の女の子が泣き出しそうになった。それを見て大声で言った。
「さすがすみれ組さん、地震になんて負けないね、ご褒美に一個だけおやつ食べていいよ」
「わああ」子どもたちは大喜びだ。そしておのおのリュックからおやつを取り出し始めた。
その間三人の先生は子どもたちに怪我がないか手分けしてみてまわった。
達也はレインボーアメの袋の封を開けると、一粒取り出して嬉しそうに包装をむいた。
「おっ、たっちゃんレインボーアメ」ゆうくんが言った。
「えへへ僕大好き」
「後で僕のラムネと交換してね」
「いいよ」達也はそう言うと美味しそうに口に入れた。
そしてもう一つ袋から取り出すと、ズボンのポケットに入れた。
「どうするの? 」ゆうくんが言った。
「えへへ…後でこっそり食べるの」
「あーたっちゃん」
「しー、ゆうくん、しー」
まみ先生の機転で車内の子どもたちは動揺が少なかった。
その間、たけし先生は外に出てバスを一周すると、破損がないことを確かめて運転席に戻ってきた。
「どこも壊れていません、行きますか? 」たけし先生はまみ先生にそういった。
「そうしましょう」そして子どもたちに言った。
「みんな怪我や気分が悪い子はいませんか? 大丈夫? 」
「はーい」子どもたちは元気に応えた。
たけし先生が左右を確認すると、三清山賀製薬へと急ぐ大型トラックが追い抜いて行く。
「じゃあ出発しまーす」
「しゅっぱつ」子どもたちが口々に叫んだ。
続けて諸岡が運転するレンタカーが追い抜いて行ったので、後を追うようにライオンバスも走り出した。




