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まみ先生はドアの外で見送りの親御さんと立ち話をしている。そこに事務の先生が窓を開けて大声で叫んだ。
「まみ先生! 達也くん五分遅刻、電話ありました」
まみ先生は振り向くと敬礼した。
「了解です」そして取り巻く親御さんに言った。
「達也くんが五分遅刻です。出発は八時五分頃になりました」
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運命の選択は常に偶然を装って訪れる。
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一番最初に達也の姿を見つけたのはゆうくんだった。ゆうくんの隣に達也が座る事になっていて、そこは空席のままだった。ゆうくんは立ち上がって大声で叫んだ。
「たっちゃんきたー」
それと同時にクラスメートが全員たちあがり、たっちゃん頑張れ! の大合唱が始まった。バスのフロントガラス越しに達也とお父さん、抱っこされた里奈の三人が見えていた。お父さんはもうヘロヘロだった。バスの近くまで来たところで、里奈を抱っこしたまま立ちすくんだ。
「たっちゃんいけ」息も絶え絶えにそう言うと、達也を一人で走らせた。
「うん」達也はバスに向かって走っていく。まみ先生も達也に手を振った。
と、達也は途中で何を思ったか、振り向くと里奈に向かって叫んだ。
「里奈、バイバイ」そして手を振る。
突然、里奈の顔つきが変わった。
「たっちゃんバイバイいやだ」大声で泣き出した。
「イヤダイヤダ」錯乱するように体を振り大声を上げた。




