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「それになんで寝巻きなの? 着替えてから御飯食べなさいっていったでしょう」
無言の二人。
「間に合わないわよ、早く御飯食べなさい」半ば怒った口調でお母さんは言った。
「はーい」二人はテーブルに戻ると再び朝食を続けた。
──この間五分ほど。
食後はお父さんとお母さんが手分けして二人の歯磨きに着替えに、お弁当をリュックに入れて、水筒に氷とお水を入れて、帽子を探して被らせ、お父さんはスーツに着替え出社の準備をして──もうドタバタだった。朝の五分は本当に貴重だと思い知らされた。
お父さんは幼稚園の制服を着た里奈を抱っこして走った。走りながら片手で携帯電話をかけている。達也は遅れないように全速力でついてくる。お父さんの電話先はかわぞえひかり幼稚園だ。
「おはようございます。かわぞえひかり幼稚園佐々木です」電話先に事務の先生がでた。
「おはようございます。進藤達也の父親ですが、五分ほど遅れそうなのでお待ちいただけますか? 」
「わかりました。まみ先生に伝えておきますね」
「よろしくお願いします」電話を切って振り返るお父さん。必死に走る達也。
「頑張れ、行くぞ」
「うん」
走る走る。
幼稚園では既に達也以外のクラスメートがライオンバスに乗り込んでいた。真っ青な空に入道雲、外の気温は徐々に上がる。そんな中すみれ組の園児たちはエアコンのついた車内で快適だった。今日の動物園遠足ではすみれ組のクラスメート三十名の他に、補助のみゆき先生にともみ先生、男性で年配のバスの運転手──たけし先生が行く事になっていた。まみ先生を除く三人の先生も既にバスの中にいた。




