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なぜ生きるか? それが知りたい!  作者: 赤木 爽人
第2章 「進藤 達也」(シンドウ タツヤ) 『命の連鎖は途切れない』
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3-2

 ──夜。


 畳の上に並んで敷いた布団の上で、パジャマを着た達也と里奈はお父さんが読む絵本に夢中になっていた。就寝前のこの時間は、お父さんとコミュニケーションをとる貴重な時間だ。お父さんはいつも七時半頃に帰宅する。そして家着に着替えるとすぐに絵本を読んでくれた。


 八時になった。

 ユキミンが一人で部屋にいて照明を消した頃、あるいは永澤剛が撮影に向けた最終ミーティングを始めたのと同日同時刻だ。


 絵本を読み終わったお父さんは言った。

「──さて今日はここまで、寝る時間です。たっちゃんは明日いつもより早く家を出るから、ちゃんと起きましょう」

「はーい」

「里奈もたっちゃんと一緒に家を出るから、早めに起きてね」

「うん」

「じゃあ電気消すよ」お父さんが立ち上がった時、達也が起き上がった。

「ちょっとまって」

「なんだい? 」

 達也は枕元に置いてある遠足用のリュックを手に取り、中を開けるとレインボーアメの袋を取り出した。

「へへへあった」

「なんだい? さっき確認しただろう」

「へへへー」ニンマリする達也。

 レインボーアメは舐めているうちに次から次と七種類の味にかわる、見た目にも綺麗で、袋もアメリカンポップなイラストが描かれた子どもたちに大人気のアメだった。一袋には、一粒づつ包装されたあめ玉が十個入っているのだが、いつもと違い全部独り占めできるのがこの上なく嬉しい。里奈と分けなくてもいいのだ。

「お兄ちゃん残ったら里奈にもちょうだいね」

「いいよ」達也は優しい、すぐにそう返した。

「絶対だよ、絶対」

「うん」達也はレインボーアメをリュックに戻すと枕元に置いた。

「さあ寝るよ、おやすみなさい」お父さんが照明を消す。

『おやすみなさい』二人が揃ってそういうとお父さんは部屋から出て行った。


 これが、毎日繰り返されていた進藤家の日常──幸せな日常だった。

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