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進藤達也のマンションは幼稚園から歩いて十分程の所にある。途中さほど広くないが幼稚園児が遊ぶには最適な東公園があった。帰りがけに東公園でもっと遊びたいと里奈が言ってきかないので一時間、多い時は二時間くらい遊んでいく事もあった。今日も同じように遊びたいを連呼する里奈に根負けして東公園に立ち寄った。
とにかく子どもはいつも遊びたいのである。
東公園は公園の周囲を立木が囲み、ブランコに鉄棒、ジャングルジムにシーソー、滑り台、砂場と、いたって普通の遊具が備えてある。木漏れ日の下にあるベンチには、幼稚園で顔なじみのお母さんが三人座っていた。子どもたちは既に東公園で遊んでいる。達也のお母さんは挨拶すると空いているところに座った。
里奈はベンチで鞄をお母さんに預けるといつも真っ先にブランコに向かう。お兄ちゃんに思い切り押してもらい、ぐんぐんブランコをこぐのが大好きなのだ。
一方達也はようやくできるようになった逆上がりの練習をしたかった。達也もお母さんに鞄を預けると鉄棒に向かおうとした。でも、やはり里奈が大声で呼んだ。
「お兄ちゃん押して押して」ちょこんとブランコに座って達也に熱い視線を送っている。
「はいはい」達也は面倒臭そうにそう言うとブランコに向かった。達也はこの頃少し兄としての自覚が芽生えてきた。お母さんもそんな達也を見て頼もしく感じていた。
「早く早く」
「わかったよ」
里奈に急かされて後ろに回り込む達也。里奈の背中を押す。ブランコが動き始める。
「もっともっと」
「はいはい」更に力を入れる。勢いつくブランコ、次第にグルングルン動き出す。
キャッキャ言って大喜びの里奈。
これだけ喜ばれると達也も悪い気がしない、更に激しく押す。




