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そんな中、青空に浮かぶ真っ白な入道雲だけがゆったりと動いていた。
ズズズズーン! 青空に地滑りの図太い音が響き渡る。
無我夢中でアスファルトにしがみつく剛と諸岡。とにかく揺れは激しい。
五分程して揺れは次第に落ちついた。
二人はアスファルトの上で声が出ない。
驚きを隠せない。
先に動いたのは大型トラックのドライバーだった。
荷台を開けて荷物を点検すると運転席に戻った。
それを見て我に返る諸岡、剛に叫ぶ。
「俺たちも行くぞ剛」
「は、はい」
運転席に乗り込む諸岡。遅れて助手席に乗りこむ剛。
諸岡がアクセルを踏む前に、大型トラックが出て行った。ギアをドライブに入れ続くように駐車場を後にするレンタカー。
「凄い揺れただったな」諸岡が言った。
「驚きました」
「そうだ、香織に電話しろ安全を確かめろ」
「あ、はい」
剛は携帯電話で妻の香織に電話をかけた。生後三ヶ月の娘──佳奈もいるから心配だ。
電話に出た香織は特に焦ってもいなかった。都内は震度三だったそうだ。それに、去年結婚を機に両親の保険金の残りで買った新築マンションだったので、最新の免震構造が揺れを吸収してくれたらしい。佳奈も目を覚まさなかった。
「くれぐれも気をつけて」そんな言葉で電話は終わった。




