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特に四号トンネルは掘削中最も多くの死者を出し、今でも彷徨う霊魂の目撃談が無くならない。
どこからともなく地下水が湧き出ていて、ピチャピチャ音を立てている。薄暗く不気味な雰囲気から通称「死のトンネル」と呼ばれているくらいだ。
これらのトンネルは平成に入って直ぐに建て替えの計画が持ち上がったが、予算の都合で白紙に戻っている。トンネルの安全よりも、通信インフラの整備や新たなバイパスの設置、都市部の再開発など近代化を優先した計画撤廃だった。
周辺住民は行政に何度か嘆願書を提出したが、行政は生活道路としか捉えていなかったので受け入れられる事はなかった。まだその頃は三清山賀製薬の本社工場も動物園もこの地になかった。
トンネルを一つ一つ抜けるにつれ段々と東の空が明るくなってきた。今は七月中旬、これだけ天気がいいと日中はかなり暑くなりそうだ。
そして、レンタカーは四号トンネルの手前にあるコンビニエンスストアの駐車場に入った。二人はコンビニエンスストアでトイレを済まし飲み物を買った。
剛が運転席に戻ったので、諸岡は助手席に座った。
冷房を利かした車の中で喉を潤す。四時半過ぎに太陽が姿を現した頃、二人は座席をリクライニングにして仮眠をとる事にした。
お腹も空いていたが、昨夜からの騒動で頭も身体もとにかく疲れていた、まずは眠りたかった。
二人とも一瞬で眠りに落ちた。




