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しかし商品の発売日は決まっている。
発売日に向かって商品の生産も小売店への売り込み戦略もスケジュールが決まっている。
『爽』が関わるイベントやキャンペーン会場のスケジュールも勿論決まっている。ゆっくりなどしていられない。
二人の最大の悩みは、結城純恋に匹敵するキャスティングを誰にするかだった。工場に着くまでには何名か名前をあげておく必要があった。今までの繋がりをフル活用して、候補をあげては吟味し、また別の候補をあげては吟味する。この繰り返しだったが、なかなか結城純恋のような清純でクレバーでスポーティなイメージを持ち、かつ、歌って踊れて、子どもから大人まで幅広い層に知名度がある国民的な人気者は出てこない。
多方面に影響力を持つ結城純恋は、他の追従を許さない、誰もが認めるビッグネームだったのだ。
しかし、関越自動車道を抜け、上信越自動車道下仁田インターチェンジが近づくにつれ、二人には一つの結論が見えてきた。それはダブルキャストの提案だった。
おのおのタレントイメージが違う二人のキャストを起用し、お互いのイメージを補足させることで幅広い層の顧客を取り込もうとするものだ。
そうした視点で考えていくと、面白くなりそうな組み合わせは幾つか思い当たった。所属事務所は今までの実績から、頼み込めば了承がとれる関係でもあった。




