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剛は、風化していない友情の絆に感謝していた。この夜が無ければ立ち直りはもっともっと先になっていただろう。
二ヶ月程実家に留まった後、東京に戻り大学に復学した。
そして、両親が掛けていた生命保険の保険金が入ってきた。加えて少なく無い額の慰謝料も入ってきた。そのお陰で、普通の大学生よりは生活に追われる事もなく、アルバイトもしないで勉強に集中できた。両親への恩返しとばかりに勉学に勤しんだ。将来の目標に向けて仲間と映画も作った。その結果美大学映像学科を首席で卒業した。
だから、もっと大手の一流広告代理店からの誘いがなかった訳でもない。
だが剛は『爽』を選んだ。というより就職活動一社目の、面接で出会った諸岡誠というスーツを着たサムライに惹かれたのである。




