7-5
宏と純也が仏壇に手を合わせた。そして三人でリビングのソファに座った。
「ずっと連絡なしでいるから心配してたべ。まずは健康そうでよかった」宏は持って来た物をテーブルに並べながら言った。
「そうだべや、剛が札幌の高校に越境入学して東京の美大いっちまって、全然帰って来ないから、宏と会いたいなって話してたんだ。俺は高校出て札幌で就職して、宏は札幌の大学行ってっから、しょっちゅう会ってるべや」純也が言った。
「悪かった」
「いい、いい、美大って難しいんだろ、なまら頑張ったな」
「今日は、何でも聞いてやるべって話してきたんだ。俺たちでよかったら色んな事ブチまけろ、そしてまた東京に戻らないといけないっしょや」宏が言った。
「ありがとう」剛の声は震えていた。
自然と涙が溢れてきた。
「おいおい、気にすんな。それくらいしかできないっしょや、俺たちにはよ」
その夜、宏と純也は剛の実家に泊まった。
そして夜通し語り、酒を飲んだ。
小学校の頃の悪戯や、同級生の話題など尽きる事がなかった。その中でも、小学生三年生の時のクラス担任だった加藤梨花子先生の話題は熱が入った。なぜなら、三人とも梨花子先生が大好きだった。
しかし、三学期が終わるとともに学校を辞めてしまった。クラスメートは誰一人として行き先を知らされていなかった。
剛は宏と純也に言った。
「俺さ、梨花子先生との思い出で一番印象に残っているのが、おんぶされて病院に連れて行かれたの、でもなんでそうなったのかさっぱり思い出せないんだ、思い出そうとすると息苦しくなるし──純也と宏は何か知ってる? 」
宏と純也は目配せした。知っていた、何があったのかは全て知っていた。




