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それはコンビニエンスストアでの買い物帰りだった。横断歩道を歩いていて信号無視をした車に跳ねられた。二人とも即死だった。加害者は酒気帯び運転だったらしい。
一人っ子だった剛は、家族全員を一瞬で失いひとりぼっちになった。
剛は北海道江別市の外れにある山里の出身で、両親はその頃も同じ家に住んでいた。江別市は札幌市の隣街である。
実家に帰ると、すぐに警察への対応、遺体の引き取り、お葬式の手配などあらゆる事柄が一気に展開した。剛も怒りや哀しみを堪えてひたすらやるべき事をこなした。余りにも悲惨な出来事にこなす以外何もできなかった、訳も分からず堪えるだけだった。そして身近な親戚だけでひっそりとお葬式をあげたが、さすがに出棺の時は棺にもたれて大声で泣いた。
剛は初七日がすんでも東京へは戻らず、実家の片づけをしなければならなかった。
庭付きの一軒家は一人でいるとガランとして広い。放り出されたままの新聞、衣紋掛けに吊るされている薄手のコート、テーブルに置かれたお盆の上の二つの湯呑み、父親のタバコとライターに灰皿、母親の老眼鏡…リビングのソファに座っていると今にも両親の声が聞こえてきそうだった。




