7-1
──両親の死。
それは、剛が東京の美術大学映像学科二年生に進級した五月だった。
いつもの仲間たちとビリヤードを楽しみ、午後十一時頃一人でアパートに帰ってきた。すると、アパートの前にパトカーが停まっていた──赤色灯は点いていない。怪訝そうにやり過ごし、アパートの鍵を開けようとした時、背後から声がした。
「永澤剛さんですね」
振り返ると二人の制服警官が立っていた。
「そうですが、何か」
「ちょっとお聞きしたい事があるのですが」
「…」
「永澤剛さんは北海道江別市のご出身ですよね」
「ええ」
「念のためお父さんとお母さんのお名前をお聞きしていいですか? 」
「永澤正と永澤和美です」
顔を見合わせて頷く二人の警官。一人が神妙な顔で剛を見た。
「気をしっかり持って聞いて下さい」
「はあ」
「先ほど江別警察署から連絡がありまして、本日午後九時頃ご両親が交通事故にあい、息を引き取りました」
「何ですか? それ」
「先ほどご両親が亡くなりました」
「ほ、本当ですか? 」
「はい、申し上げにくいのですが本当です」
「! 」
剛は意識が薄れ倒れかかった。咄嗟に警官が身体を支えた。




