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『昨夜八時半頃、タレントで歌手の結城純恋さんが自宅マンションから飛び降り亡くなりました。二十七歳でした。部屋には覚醒剤が残されており、警察では事件と自殺の両面から捜査しています』
「覚醒剤だと」語尾を荒げる諸岡。
「製薬会社のイメージキャストが覚醒剤じゃ、洒落にならん」
「──」
窓外を見つめる諸岡。高層ビルがいくつも現れては消えていく。
「しかし撮影日直前にクライアントに頭を下げにいくなんて思わなかった。こんなの初めてだ」
「俺だってそうですよ。何やってんでしょうね」
「なあ剛、人生はままならないもんだな」
「全くです」
「しかしあっけないのう、飛び降りたら一瞬で全て終わり。こういう幕引きがされるとは思わなんだ。そういう俺も五十過ぎてからの人生を俺自身イメージできないのは確かだ…ひょっとして死ぬの? 」
「ちょ、ちょ、諸岡さんには長生きして貰わないとこまります」
「何で? 」
「何でって! 親父もお袋も四十九で亡くなっています。諸岡さんも同じ歳で死ぬんですか? 俺は絶対に嫌ですからね」
「そういうもんかな」
「物騒な事言わないで下さい、全く、こんな時に」
「──」




