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一時間ほどして剛と諸岡はレンタカーで三清山賀製薬群馬本社へと出発した。
三清山賀製薬の群馬本社は数年前に現在の場所に移転し、本社機能、生産工場、研究所が一つの山の中にある。『爽』のある東京都文京区からだと首都高速道路──関越自動車道──上信越自動車道下仁田インターチェンジ──一般道を走ることになる。
レンタカーの運転席では剛がハンドルを握っている。諸岡は助手席だ。
「高速道路で二時間、下道で二時間ってとこか? 」諸岡は言った。
「そんなところですね」
「始業は九時だったよな」
「ええ」
「朝一で社長に会えるか──」
「大丈夫です」
「剛、充分時間はあるから無理するなよ、運転途中で代わるからな」
「アシスタント時代に諸岡さんにたっぷり鍛えられているからこれ位どうってことないっす」
「馬鹿! あの頃とは状況が違うだろ、奥さんに産まれたての赤ちゃん、お前に何かあったら一生香織に恨まれるわ」
レンタカーの時計は既に十二時を回っていたが、フロントガラス越しに見える東京は、ネオンの灯りや、酔っ払いなどでざわざわしている。道路では夜間配達のトラックとタクシーがまるでサーキットの様に先を急ぐ、剛の運転するレンタカーはその間を走り抜けると、首都高速道路の入り口へと滑り込んでいった。
と、聴くともなくかけてあった車内ラジオからニュースが流れた。




